母・香澄の不安-2
「真奈美ちゃん。本当にありがとう。
君のおかげで、敏明も、無事中学を卒業できそうだ。
生野さん。本当にありがとうございました。
あなた方の理解がなかったら、敏明は。。」
「斎藤さん。こちらこそ、お礼を言わせてください。
真奈美はこの5年余りで、とても大きく成長した。
こちらに定期的に伺うことで、真奈美はきっといろいろと経験させていただいた。
そして改めて人の優しさや素晴らしさを感じたのだと思います。
ありがとうございました。そして、おめでとうございます。」
「生野さん。今日は、真奈美ちゃんのおかげで完治した、
敏明の身体の素晴らしさをあなた方にも見ていただきたい。
ようやく人前に出られるようになった身体。
真奈美ちゃんが治してくださった身体。
失礼かとは思いますが、ご両親にこそ見ていただきたい。」
「失礼なんて、とんでもない。
人間、健康が一番です。ましてや若い身体は。」
「そして、もし、よろしければ、
真奈美ちゃんがしてくれて来た治療がどういったものだったのか、
それがどれほど意味のある、価値あるものだったのか、
それも実感していただきたいのです。
今までずっとお話しせずに隠してきましたが、
今日は全てをお見せし、全てをお話ししたい。
そのうえで改めてお礼とお詫びを申し上げたい。」
「いや、お礼とかお詫びとか、やめてください。
あの日、真奈美のことをお願いしたのはこちらの方です。
あれからもう5年にもなりますか。」
「はい。長かった。
しかし、真奈美ちゃんが来てくれることが唯一の希望でした。
あの子がまた2週間後に来てくれる、
そうすれば敏明はまた健康に一歩近づく。
そう考えると、
真奈美ちゃんが来てくれるののが待ち遠しくて待ち遠しくて。」
「本当なんですよ。
うちの人ったら、わたしがジェラシーを感じるほど、
真奈美ちゃん、真奈美ちゃんって。
まるで自分の娘以上に可愛がって。」
「いや、それほどまでにしていただき、真奈美も幸せです。
あ、それから、紗理奈さん?お姉さま、でしたね。
その方にもいろいろと教えていただいたそうで。
真奈美はいつも話していました。
わたしも紗理奈お姉ちゃんみたいな人になりたいって。」
「ありがとうございます。
自分の娘を褒められるのは親として自分が褒められているようですね。」
「あなた。そろそろ準備を始めないと。
そうでないと、話が前に進んでいきませんわ。」
「確かに。麗子。お前の言うとおりだ。では、お前も準備しなさい。」
「はい。では、奥さまもご一緒に。」
「エッ?わたしも何か?」
「はい。生野さんの奥さまにも、ちょっと準備していただきたいことがありまして。」
「なにかしら?わたしで何か、お役にたてますか?」
「お手を煩わせて申し訳ありません。
俊明の全快祝いということで、ちょっとお力をお借りできればと思っております。」
「そういうことでしたら。あなた、じゃあ、わたしは。」
「ああ。失礼のないようにな。」
「では、準備できたら美奈子を呼びに行かせますので。失礼します。」
香澄は真奈美を伴って、麗子とともに部屋を出た。