秘めたる炎-2
「今更なんだけど、サーガ事件の時、多くの爆破テロが起きましたよね?西進不動産ビルから始まり風俗店、東京拘置所、それに旅客機を使ったテロ。それらの全ては豊富な知識や経験がなければあれだけ見事に成功出来るはずがないと思ってます。あれの全てを佐川が企て、実行した…、その事に違和感があるんですよね…未だに。」
県警本部長室で石山とコーヒーを飲みながら、過去の事件を思い返す若菜。石山も神妙な面持ちで話を聞いていた。
「また繋がってると思うのか?今回の事件。」
「分かりません。しかしあの事件に何らかの関わりがある人間が生きている以上、糸は完全に断ち切れる事はないと思うんです。ネットでは未だに湯島武史を崇める輩はたくさんいる。伝説が生まれた以上、ある意味湯島武史は神としてずっと生きているようなもの。田口徹でさえ崇める輩も多い。彼らを崇める奴らからすれば私は悪。未だにネットではレイプしたいだの犯したいだと言われてますからね。」
「そーゆーのは気にするな。」
「はい、気にしてません。しかしそんな湯島や田口に比べて佐川を崇める輩は殆どいない。私から見ても犯罪者のレベル、資質において佐川は数段落ちる。むしろ海老原優里の方を崇める人らの方が多い。しかしした事はあれだけの被害を出して多発テロを成功させたと言う、間違いなく日本犯罪史上最悪の犯罪。そんな歴史的犯罪をあの佐川が起こしたとはどうしても思えないんです。」
佐川健吾の世論は卑怯者という意見が多い。やはり海老原優里を擁護する風潮があれば、その敵はそうなる。犯罪史上最悪の事件を起こした割には評価は低い。 そこに若菜はずっと引っかかるものを感じていたのであった。
「そしてこのRevolutorの事件が始まった。とっかかりはこの千城県で女性を辱めるような全裸張り付け事件が始まりだった。この事件が始まってから華英ちゃんの様子に変化が見られた。華英ちゃんはそもそも捜査の為とは言え風俗に自ら飛び込んで行くような子じゃない。彼女がそこまでのアクションを起こす理由は恩師の復讐しかない。もしかしたら恩師の渡辺智則さんの命を奪った本当の犯人の存在に気付いたからなのかもと私は思ってます。華英ちゃんはその情報をガルモに潜入捜査している中で得て、密かに復讐しようとしているのではないかと。その気持ちは良く分かりますから。」
「警視庁総監であるお前がわざわざこっちに来て捜査に加わっている本当の理由はそれか。Revolutorは佐川健吾の事件と繋がってる、と。また麻薬や覚醒剤も関わってるし、な?」
「はい。」
若菜は悲しそうな瞳で石山を見つめた。