ライラック-2
「美音…」
愛しい人の名を呼ぶと、自然と涙がこぼれた。ああやっぱり俺は今でも美音を愛してる。重ねた月日が嘘だなんて、認めない。
思い出の『美音』を振り払ってまた走りだす。今走らなきゃ、きっと帰れない。
公園の入り口まで走って少し振り返ると、美音はまだ笑ったまま子猫を抱えそこにいた。
ただいまも言わず自分の部屋に入り、安堵した。『ミオン』がそこにいてくれたから、思い出は嘘じゃなかったと信じることができた。
「ただいま、『美音』」
まだ、俺は諦めたくない。