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七日目のプール
【青春 恋愛小説】

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クモの巣-1

―あたしが心を奪われた男は昔から自己中心的でプライドが高い、性格の悪い男だった。涼はあたし以外の友達はほとんどいなくて、だからあたしが付いてなきゃ駄目なんじゃないかと錯覚していたのは小学生の時。今から考えると、なにかとうるさく世話を焼くあたしを、涼は正直疎ましく思っていたのかもしれない。

中学校に入学して周りの環境が変わるとともに涼も変化した。他人に限りなく無関心なくせにそれを隠すように愛想を振りまいて、人と人の間を上手く渡り歩いていく。ああもうあたしは必要ないんだと気付いて少し胸が痛んだ。

二年と少し前、高校に入学してしばらくすると、涼に彼女ができた。
あたしに報告もしてくれなかった。

胸の痛みに顔をしかめて、はっとした。これは恋だったんだ。





誰もいない静まり返った図書室。図書委員のあたしは返却用のカウンターの中に座って裕也と涼のことばかり考えている。最近はもうこのことばっかりで、いい加減忘れてしまいたかったけど、どうしても無理みたいだ。

裕也と別れて一週間、あたしはみるみるうちに後悔と、自分のした仕打ちにボロボロになっていった。

「…元気ないな」
カウンターに顔を横にしてつっぷしたあたしを覗き込んで、いつの間に入ってきたのか、涼が言った。
あたしはあえて顔を上げなかったけど、分からないはずがなかった。


「そう?」
なるべく普通に。どうかいつも通りにあたしの声が聞こえますように。
覗き込んでいた涼の顔が視界から消えた。と思ったら気配があたしの横に移って、また目の前に顔が現れた。

「…ねえ」
「何?」
涼越しにあの日の空が甦る。

「いまでも蛍ちゃんのこと好きなの?」
蛍ちゃんというのは裕也と涼の元彼女のことだ。

「別に、普通…かな」
「…じゃあなんで裕也にあんなことしたの」
顔色一つ変えずにあまりにもさらりと言ってのけられたから、内心驚きつつ聞き返す。

「…許せなかったんだよ。あいつが」
「自分の彼女を取られたから?」

あたしがそう言うと涼は小さく笑った。その瞳は冷えきっていて、涼の視線に捕まると思わず身震いした。

「裕也…だっけ?あの程度の男に『俺のもの』を取られたんだ。だから『あいつのもの』を取ってなにが悪い?」

信じられなかった。甘い恋の思いに溺れて気付かなかっただけ、この男は…。

「今の俺、何も持ってないんだ。だから美音に側に居てほしい」

騙されちゃ駄目なことは分かってる。今からでも遅くない…裕也に泣いてすがればきっと許してくれる。優しい裕也はきっと…。


「美音、おいで」
涙で視界がぼやける。こんなことになるならあの日、涼に見つかる前に溶けてしまえばよかった。あたしの望みどおり涼はあたしの汚い部分を受けとめてくれた。だけどこんなの恋って言えるの?


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