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THE 変人
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竜宮城-3

まるで爆弾となり海に投下されたかのようだ。まさに海に突き刺さるかのように海中へ突っ込んだ海斗。目を開けると、当然ながら水世界が広がっていた。

(ここ、こんなに深かったのか…)
崖の真下のはずだが、海中に下に続くはずの崖が見当たらない。上を向いても太陽の光さえ見えない。まるで何十キロも先の沖合の海中のようであった。

(てか、瀬奈!?瀬奈はどこだ!?)
着水の衝撃で瀬奈を離してしまったようだ。慌てて周りを確認するが見当たらない。そんなに遠くに行っていない筈だ。海斗は無我夢中に瀬奈を探す。

(どこへ行った!?瀬奈…!瀬奈…!み、見当たんねー!五里霧中ってか五里海中だな!もしかして死ぬのは俺だけ!?マジか!それじゃ完全なマヌケじゃねーかよ!!このまま死んだら絶対に馬鹿にされるよな…。幸代なんか、高所恐怖症のくせにムササビみたいに崖から飛び降りるなんて、最後まで変人でした…とか葬式で言うんだろうな…。安田部長とか、一生魚と戯れられて幸せでしょう、アーメン、とか言うんだろうなぁ!ヤバっ、マジでダセー!やっぱ死に方も変人でしたで締めくくられちまうぞ、オイ!!)

死を意識すると急に海が怖くなって来た。あれだけ海が好きだった自分が嘘のようだ。海で死ねるなら本望だと言い続けて来た海斗だが、そんなカッコいいものではないと気づく。自分の墓場になろうとしている海が物凄く怖く感じる。水難に遭った人の霊に足を引っ張られるのではないかとビクビクしていた。もしかしたら漏らしていたかも知れない。

「…じゃなくて!瀬奈だ!マジでいねーし!一体どこに行った!」
辺りはどんどん暗くなっていく。と言う事は海底に向かって沈んでると言う事だ。気付けば上を向いても太陽の光さえ差し込んで来ない。マジで死んだな…、そう覚悟した。

その時であった。海斗は目を疑う光景を目の当たりにする。なぜなら遥か下方にぼんやりと灯りが見えたからだ。
(な、何だあの灯りは!?チョウチンアンコウか!?ここらにはアンコウがいっぱいいるからな。いや、魚じゃねーし!けっこうデカいぞ?)
近くにつれ、その灯りが結構大きい事に気づく。チョウチンアンコウやライトの灯りとか、そんなレベルではない。そう、まるで海底都市が存在するなら、そのレベルの灯りであった。

(これは夢か?それとも俺は死んだのか??いや…まさか…、竜宮城!?)
チョウチンアンコウやライトの灯り、海底都市の灯りと言うよりも竜宮城と言った方がしっくりくる。見ているだけで安らぎを与えてくれるような何とも暖かい光に感じられた。

その時、幻聴かと思うぐらいの微かな声が聞こえた。
「ダメだよ、来ちゃあ。海斗ぉ。」
海の中、不思議な感覚であった。耳から聞こえるはずがない。何かテレパシーのような声であった。しかしその声が誰のものなのかだけははっきりと分かった。
(瀬奈!!)
瀬奈はあの光の中にいる、そう確信した。海斗はその灯りに向かい必死で海中を泳いだ。途中、見たこともない魚や大きな亀を見たような気がする。しかしそれらには目もくれず、海斗は灯り目掛けて必死で泳いで行くのであった。


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