[あたし、こうするしかないんです・・・]-1
『……へぇ〜。大人しくダンナ様を待っててくれたのかあ』
優乃の儚くも脆い決意を知らぬ芦澤は、声すらあげなかった優乃が〈堕ちた〉と思っていた。
小躍りしながら駆け寄り、一仕事終えたばかりの汗だくな尻を撫で回す。
啜り泣きに尻は細かく震えており、排便したばかりの肛門の周囲は仄かに赤みを帯びている。
そして汗にじっとりと濡れた髪を掻き上げて横顔を覗くと、その泣き顔は実に弱々しく、それはどう見ても諦めの境地に居る者の姿だ。
『ただいま、優乃。寂しかっただろう?さあ、大好きなダンナ様と、お帰りなさいのキスをしようか』
突き上げられる尻に向かって語りかけた芦澤は、割れ目を剥いて肛門をベロリと舐めると、優乃をゴロンとひっくり返して抱き起こし、右の頬にキスをした。
『……ん?お帰りなさいの挨拶はどうした?』
「……お、お帰りなさい…だ…ダンナ様…ッ」
碌に拭きもしなかった肛門を、この男は平然と舐めた。
衛生観念までも狂っている様を見せつけられた優乃は、ますます芦澤という男が怖くなってしまった。
しかも今、交わすのを強要しているキスの挨拶は、恭介との何時ものやり取りである。
どこまでも夫婦生活を愚弄してくる忌々しい鬼畜だ……。
「ちょっ…!?い、イヤ…んぷぷッ!!??」
優乃が芦澤の頬にキスを返すと、あの汚らしい舌を真っ直ぐに伸ばして唇を奪いにきた。
きっと自分の汚物が付着しているであろう舌の挿入を優乃は拒めず、しかもそれは口の中をベロベロと舐めて這い回りだした。
もう充分に汚されたと思っていた口は、これ以上ないくらいに汚された。
それは汚辱の上限に、まだまだ達していないという意味をも含んでいるはずだ……。
『優乃は飲みこみが早いねえ。トントン拍子でダンナ様が思った通りのアナル妻になって……この調子なら恭介が帰ってくる前に家に帰れる≠ゥもねえ?』
「ッッッ!!??」
優乃は恭介が助けてくれるまで、この部屋から出られないと思っていた。
だから帰宅するのを待ちわび、それだけを願っていた。
だが、今の芦澤の台詞を信じるならば、恭介の救出を待つまでもなく自宅に戻れる。
もし恭介に救出されたとすれば、この部屋で自分が何をされたのか≠知られてしまう。
しかし、帰宅前に自宅に帰れたとしたら、何もかも秘密にしておける。
いつもと変わらぬ小野原優乃のままで、再び恭介の傍に居られる……。
『嫌いな者同士で暮らしてる《仮面夫婦》なんだろ?もし今日のコトが恭介にバレたら、アイツは『離婚だ』『裁判だ』って騒ぐだろうなあ。ああ間違いない、あの守銭奴のコトだ。優乃の両親にも責任問題を吹っかけて、金を毟り取ろうと大騒ぎするなあ……そうなったら嫌だろう?』
聞くに耐えない偏見と謗りに怒りを覚えなくもないが、芦澤の気持ちを変えてしまうような言動を優乃がとれるはずがなかった。
存分に夫の恭介を罵った憎き隣人の顔を、優乃は感情を押し殺して見た。
その顔は締まりなくニヤニヤと笑い、相変わらずどこまでが本心か分からぬままである。
『ヒヒヒッ…優乃は良く出来たアナル妻だあ……もう言われなくてもお願いの仕方も分かってるし、おねだりのキスも上手く出来るよねえ〜?』
「ッ〜〜〜〜!!!」
剥き出しのまま花を咲かせた秘部に、生身の男根が乗っかってきた。
股間を守ってきたパンティは太腿の枷に引っ付いて伸びきり、ただの伸縮自在の布でしかなくなっている。
「……っう"ッ!……ダンナ様…ゆ、優乃のアナルを…ッ…ち、調教してください……ッ」
迷っている時間の分だけ、帰宅の時間が遅れてしまう。
そして台詞の言い直しを迫られた分だけ、やはり遅れてしまう……。
恐怖と憎悪の権化である芦澤の首に腕を廻し、直視するのも躊躇われる顔を抱き寄せる……嘘や偽り、蔑みしか言わぬ唇に優乃は自分から唇を重ね、そして我が物顔で侵入してきた誠に汚らしい舌に好いように口中を弄ばれた……。
『ヒッヒヒヒ!今のは100点満点の答えだ……ダンナ様はな、ますます優乃のコトが大好きになったよ……さあ、可愛い優乃に《御褒美》をあげようかなあ?』
「ッ………!!??」
手枷を掴んで優乃を引き起こした芦澤は、開脚座りにさせた上で、待ちきれない男根を優乃の顔に突きつけた。