コーヒータイム-1
情の深い娘につけ込んで、親父はやりたい放題。
「喉渇いた」
しがみついてる花梨の耳元でささやくと、花梨は物憂げに背中を捻らせて、シフトノブ近くのドリンクホルダーに手を伸ばしていく。
俺が愛飲してるのは、クラフトBOSSの無糖ブラック。
ペットボトルのコーヒーを手にした花梨は、キャップを外すと、それを自分の口の中に。
口に含むと、「ん…」と、唇を突き出して、好きなときに飲んでいいよというポーズ。
わがままし放題で、こんなことまでやらせてた。
視界が塞がれちゃうから、普通に顔を重ねてゴクゴクなんてできない。
でも、花梨のあごが仰け反るほどに顔を上向かせれば、窺うように前方を覗き見ることはできる。
ちょっとスピードを緩めて、わずかな隙に唇を重ねる。
注ぎ込まれる苦い味。
量は、ほんのわずか。
もちろん、俺の視線は前方に向けたまま。
短時間だから注ぎ込まれる量も高がしれている。
だから、二、三度繰り返す必要がある。
でも、そのうち要領を得てくると、一回でも全部飲めるようになってしまった。
舌を突っ込んで弄ぶこともできるようにまでなるんだから、慣れってすげえわ。
「んっ!…んっ!」
乱暴に口の中を掻き回されて、花梨は苦しげな声。
ほんと、意地悪なお父ちゃんだよ。
「ぷはっ!」
ようやく許してやると、ちょっと涙目。
怒ってるかな、って思ったら、
「もっと、甘いのにしようよぉ…」
だって。
お子ちゃまの花梨にブラックは早すぎる。
情けない顔をする娘に、思わず笑ってしまった。
これがほんとの”苦笑い”。
お粗末様でした。