それぞれの窓の下に。-1
「シンイチさん…!シンイチさんってば〜!」
…。
「ごめん…マナミ…。ゴメン…。」
…。
「シンイチさん?」
「…。」
「大丈夫〜?」
心配そうにこちらを見つめるマナミが目に入る…。
「なんかすごくうなされてたけれど…すごい寝汗だし…」
いつもの寝室…。いつものマナミがいた…。
何も言わずにそのままきつく抱きしめる…。
「ちょ…ちょっとシンイチさん〜…?」
言葉に出ないけれど…なぜかごめん…マナミっと…。
突然に出てきた"カナ"が気にはなったけれど、もう抵抗をあきらめたマナミが隣に抱きしめられていた。
当然マナミだけを見つめること。そう思うと…マナミをいとおしく思い…
そのままマナミの横に大きなため息を一つ吐き捨ててマナミへ唇を付ける…。
「マナミ…愛してるよ。」
それまで心配そうな不思議そうな複雑な表情をしていたマナミがいつも以上の優しい表情になって…。
「シンイチさん…愛しています。」
胸に顔をギュッと押し付けてくるマナミを抱きしめ…そのまま眠る…。
10:45。
9時始業の会社だけど…起きたらそんな時間だった。
部長になっていた先輩から5件の電話が入っていたのに気が付くと…
すぐさま折り返し電話を入れる。
「お、生きてたな。寝坊ならいつも疲れてるんだろうから今日はそのまま休んで月曜にきちんと出勤しろよ。後はうまく言っておいたからシンパイスンナ…。」
ある意味心配だけどこういうのは任せておけば問題はない。うわごとのように感謝し連絡終わり。
マナミがとても申し訳なさそうにのぞき込んできた…。
「大丈夫だった…?私まで寝坊しちゃって…」
先輩はあの後偶然にもマナミの地元である支社に転勤。
ポロリとそのことを言うと先輩が手を回しそのまま転勤。
そんな流れでマナミとの交際、結婚に至るまで家族ぐるみで付き合いを深めている。
よってたいていのことは問題ない。遠慮なくいぢめられる後輩というあくどい一面を除けば。
思わぬ3連休となったのでマナミの親孝行に子供たちを連れてマナミの実家にお邪魔しに行く。
…。
穏やかな日々…。
変わらず流れる日々…。
最良の幸せをそのままに過ごす日々…。
月曜日…出勤時、駅のポストに返信ハガキを投函する。
参加しないに印をつけて。
マナミはもったいないね〜っと言いながらも何かうれしそうにしていた。
「どうせなら子供たち義父さん達に預けてマナミと二人で行こう。」
そう言いマナミの頬に手を添えると「んっ。」っとキスされた。
出勤するとなぜかクラッカーで歓迎される。
「先輩3人目できるんですってねっ!」
「おめでとうございます〜!」
やられた…。
「まだ仕込んでもないけどな…きっとたぶん…。」
言葉が濁るのはまぁ濁るわけだけど。
〜・〜・〜・〜・〜
少し日がたち少し早めに帰宅したとある日…。
玄関を開けると見慣れない靴が2足。
「あ、シンイチさん、おかえりなさい〜。」
いつものように抱きついてこないので様子を見る。
「珍しいお客さん来てるよ。」
マナミはちょっとした含み笑いを見せつつウインクしてくる。
「シンイチ〜!」
「シンイチ君っ!」
呆然と思わずカバンをそのまま床にポトリ…。
3人の女子が予想通りと笑ってる。
リビングに行くと子供が二人。
「カナデさんは実は私と東京で同じ職場で、ずっとお世話になったんだ〜。」
マナミのその言葉…初耳過ぎた。
「マナミさんどんどん出世していっちゃったけれどね。」
ふと見るとカナデもカナエも夢に出てきた二人と違いそれぞれがいい年の重ね方をしたのか感じがだいぶ変わっている。
「そうそう、カナデさん結婚して無事に出産したってことで遊びに来てくれたの。」
なるほどなぁ…っと。
「同窓生名簿見て、マナミさんに連絡取って、なんかすごい偶然ってカナエもつれてきちゃった。」
…。
大変居心地はよろしくないけど。
「じゃぁ女三人で女子会かな?」
逃亡の一択。
「あら、せっかくだしシンイチさんも…ね?」
しかし回り込まれた。。。