[お隣さんの正体]-2
『ハハッ…困ったところを見られたなあ……なあに、自力で立てるから大丈夫…ッ』
「だ、駄目ですよ!ほら、あたしが支えてあげますから」
芦澤の放った〈釣り針〉に、優乃は簡単に喰いついた……芦澤の左腕を肩に廻し、一生懸命になって腰に負担が掛からぬようにして勝手口の中に一緒に歩いてくれる……少し腕を動かすだけで、この美味そうな巨乳を鷲掴みに出来る……またも男根は瞬時に勃起し、上手い具合に足の運びを妨げてくれていた……全く親孝行な《息子》である……。
『そ、そこに座れたらもう大丈夫。あとは自分一人で……』
「そうっと座ってくださいね?腰に響かないように」
勝手口の上り口に芦澤が腰掛けるのと同時に、優乃も隣に並んで座った。
肩に腕を廻しているのだから当然である。
「鎮痛剤とかあるんです…かッ!?」
思わず芦澤は優乃の胸に触れてしまった……それは軽く掌が擦れる程度のものだったのだが、優乃は無言のまま慌てて跳ね退き、両腕で胸を守るようにして半身になって構えた……。
「い…今……触りました…!?」
この瞬間、優乃に対して一方的に抱いていた妄想が、所詮は妄想だったのだと気づいた……真顔のままジッと見据え、僅かな動きすら見逃すまいと警戒を厳にしている……あるのは「気安く身体に触れてくるエロオヤジ」という軽蔑の思いと、この事実を第三者に訴えてやりたいという社会的な正義感だけだ……。
『ご、誤解だよ…ッ…自力で立とうとしたら偶然腕が……』
やはり問答無用で襲えば良かったのだ。
『俺に気がある』などと余裕を見せずに、一気にカタをつければ良かったのだ。
芦澤は心の底から〈誤解である〉と訴えるフリをしながら、ズボンの右ポケットに忍ばせていた《凶器》を握る。
そして腰が痛むと渾身の演技をしながらゆるりと立ち上がった……。
「!!??」
一瞬の速さで距離を詰められた優乃は、咄嗟に外に逃げようとした。
腰に難があると思い込んでいたが故に不意打ちの形になり、背後から襲われた優乃は口を塞がれて抱き締められてしまった。
「ぶぐぐぐぐぐぐッッッ!!」
右脇腹に何かに噛み付かれたような激痛を感じると同時に、全身の神経が爆ぜて焼け落ちていくような強烈な脱力感を感じた……振り払おうにも腕は動かせず、逃げようにも足には力が入らない……ペタンと勝手口の中でへたり込んでしまった優乃の瞳には、気色ばんだ隣人の姿が映っていた……。