とし君がいない学校なんて-2
「3年以上?敏明はその頃、もうとっくに中学生ですよ。」
「いや。それも、あくまで希望的観測だ。」
「でも、できる方法がそれしかないのなら。。」
「まずは真奈美ちゃんの気持ちを聞いてみよう。」
次の日、真奈美が学校から帰ると、母親が待っていた。
「でね、さっき、敏明君のお父さんからお電話があって。。。
もしよかったら、これからお見舞いに来てくれないかって。
どうする?真奈美ちゃん。」
「え〜。行く、行く、行く〜〜。
ねえ、お母さん、行ってもいいでしょ?」
「そうね。是非、っておっしゃっていたから。行ってらっしゃい。
あ、それからもしよかったら、夕飯もどうぞって言われちゃったけど。」
「え〜。ホント〜?ねえ、いいでしょ?いいでしょ?お母さん。」
「う〜ん。敏明君が具合が悪いのに、
夕飯をご一緒にっていうのも、ちょっと変な気もするんだけれど、
敏明君が真奈美ちゃんと一緒に食べれば元気になる、って言ってるんだって。
失礼のないようにね。」
「は〜い。やった〜〜〜!!」
真奈美は直ぐに着替えて、家を飛び出そうとした。
「あ、真奈美ちゃん。これ、持って行って。」
「なあに?」
「敏明君へのお見舞いよ。
何がいいかわからなかったから、男の子が好きそうな乗り物の本、買ってきたの。」
「ありがとう。」
「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。」
真奈美は前回と同じように、ちょっと道に迷いながら、
ようやくとし君の家の前に着いた。
家の前には姉の紗理奈が待っていた。
「あ、ありがとう。真奈美ちゃん。よく来てくれました。」
「こんにちわ。とし君、元気?」
「うん。元気は元気、だよ。元気すぎるくらいに。。」
「でも、学校、休んでる。」
「うん。そうだなあ。元気すぎる病気、かな。」
「元気すぎる病気?元気が良すぎてもダメなの?」
「う〜ん。そうかもね。あ、どうぞ、お入りください。」
「お邪魔しま〜す。」
真奈美はリビングに通された。
テーブルには敏明の父親と母親がいた。
「真奈美ちゃん。悪かったね。急に来てもらっちゃって。」
「ほんと、ごめんなさいね。」
「あの、、、とし君は?」
「あ、今、自分お部屋にいるわ。」
「寝てるの?」
「ううん。元気よ。でもね。」
「でも?」
「うん。実はね、真奈美ちゃん。お願いがあるんだ。」
「お願い?」
「そう。この前みたいに、また、敏明を助けて欲しいんだ。」
「この前、みたいに?」
「う〜ん。ちょっと難しい話になるんだけど。
真奈美ちゃん、聞いてくれるかい?」
「うん。お話、聞くよ。」
敏明の父親は、昨日の夜はほとんど寝ずに、
どう話せば真奈美にわかってもらえるかをずっと考えていた。
そして、敏明が、とても珍しい病気にかかってしまい、
このままでは学校に行けないこと。
治すためにはとても時間がかかること。
そして、敏明を治せるのは真奈美しかしないことなどを、
わかりやすく、必死に話した。
真奈美は時々首を傾げたり聞き返したりしながら、一生懸命に話を聞いた。
敏明の父親が話し終えると、真奈美は言った。
「真奈美はいいよ。とし君がそれで治るんだったら、真奈美、頑張る。」
「本当かい?でも、敏明が治るのは、ずっと先になるかもしれないんだよ。」
「大丈夫だよ。真奈美、とし君とずっとお友達だもん。
お友達が困ってたりしたら、助けてあげるのが友達だよ。
とし君、いつも真奈美のこと、助けてくれて、優しくしてくれて。
だから、真奈美、頑張るよ。」
「ありがとう。それでね、真奈美ちゃんのおうちには、
おじさんがきちんとお話をしに行こうと思っている。」
「ふ〜ん。」
「なにしろ、3年以上、定期的にうちに来てもらうことになるんだから、
きちんとお話しして、認めてもらわないといけないんだ。」
「大丈夫だよ。うちのお母さんも優しいから。」
「敏明に会っていくだろ?」
「ううん。今日はいい。
それよりも、とし君のお父さん。」
「このまま、真奈美のおうちに来て。
それで、今のお話、お母さんとお父さんにして。
とし君、治すんだったら、早い方がいいよ。」
「真奈美ちゃん。。。ありがとう。」
真奈美に連れられて、敏明の父親は生野家を訪ねた。
あらかじめ電話を入れておいたためか、真奈美の父親もほどなく帰宅し、
敏明の両親は、初めて真奈美の両親と対面した。
ありきたりの挨拶が交わされ、話はいよいよ本題へと入っていった。