本番に向けて 合宿1日目 その1 -1
「長野の言葉と告白が衝撃的だったのは確かだ。」
「ああ。ジュンコのこともなんか見直しちゃったしな。」
「けど、良くOK出たよなあ。」
「ああ、OKを出させた長野も見事だし。」
「そう。でもそれ以上に見事なのはこの合宿をやることにもOKを出して、
こんな施設まで手配しちゃう副担任だよな。」
「ああ。内装とかも高級ホテル並みだぜ。」
「201号室。ここだ。じゃあまたあとでな。」
「1時間後にロビーに集合だったな。」
「ロビー?ホールじゃなかった?」
「ま、白木に聞くからいいよ。」
「そうだな、女はそういうところ、しっかりしてるからな。」
二人はドアの前で別れ、ぞれぞれの部屋へ入っていた。
加藤健は白木華の待つはずの201号室へ。
菅田将暉は広瀬鈴が待つはずの202号室へ。
「よう、白木、今日から1日、よろしくなぁ。」
「キャーッ!見ないでよ、エッチ!!」
「ご、ごめん、着替え中だったのかよ。」
「もう、出てってよ。あと10分くらい。」
「別にいいじゃねえか。あっち、向いてるからさあ。」
健はそう言いながら部屋に入り、外の景色を眺め始めた。
「って言いながら、今、見たでしょ?」
「見てないって。ピンクのブラなんて。」
「しっかり見てるじゃないのよ〜。」
「って言うか、なあ、白木って?……。お前、広瀬じゃん。」
「何よ?」
「お前さあ、部屋、間違えてね?」
「えっ?うそ。あ、やばい。」
「じゃあ、白木は?」」
「隣だ。やば。ま、いいか。」
「お前がいいんなら、それでいいけどよ。」
「ところで広瀬、長野が言ったことの意味って、考えたか?」
「愛依が言ったことの意味?なに、それ?」
「いや、だからさ、あの言葉の意味と、今日からの合宿の意味、だよ。」
「それがどうしたのさ?」
「お前だって、昨日の夜、考えたんじゃないのか?
愛依のこと、愛依の過去、今までの愛依の気持ち、
この合宿や学園祭にかける思い。」
健がいつになく熱く語りだすのを、鈴はベッドに腰かけじっと見ていた。
「そして、今までの自分。これからの自分。」
「なんだよ。ちゃんと考えてんじゃねえか。」
健は鈴の横に座わり、鈴のおでこを軽く突き、笑った。
「そりゃあそうだよ。愛依の話、強烈だったもん。
なんで気づいてあげられなかったんだろうとか。
愛依が言うほど自分はちゃんとしてきたのかなとか。」
「自分自身に、本当に自信が持てるかとか。」
二人は互いの顔を見ることなく、話し続けた。
「そんな自分がこの合宿で何をしたらいいんだろうとか。」
「なんだ、けっこうちゃんと考えてんじゃねえか。」
「普通、考えるでしょ。」
「お前、けっこうまともじゃん。」
「まともなんかじゃないよ。言ったでしょ。
付き合った男のあそこのスケッチしてるって。」
「だって、興味があったらそうしたいじゃんか。」
「エッ?」
鈴は、思わず健の顔を覗き込んだ。
「だからさあ、好きなものなら、とことん知りたいって思うじゃん。
記録に残したいとか思うじゃん。
人によっては写真に撮ったり詩にしたり、忘れないようにするじゃん。。
お前は絵が得意だからスケッチするんだろ?」
「だって男のあそこだよ?」
「あそこだろうがどこだろうが、
好きなんだったら関係ないだろ?
それが山でも動物でもクルマでも。
大事なのはどのくらい好きかってことで、
それが何になるかなんて本人にも分らないことってあるんじゃね?」
「健って、パン焼くのが得意なんでしょ?」
「ああ、あの話か。」
「パン焼くのが得意なんてスッゴいマトモだし、
人に自慢出来たり…」
「…出来たりしねえんだよ。好きなのは捏ねるほう。
焼くのは仕方ないからだ。」
「焼くのが目的じゃないの?」
「ああ。ああいう、ほら、その、、、
柔らかいものをこねくり回すのが好きなだけさ。」
そう言うと健は少し照れ笑いを浮かべた。
「ほら、女の…その…ほら、柔らかい…」
「ひょっとしてオッパイ?」
「ああ、小さい頃からずっと、な。」
「ふーん。でも男ってみんな、おっぱい好きでしょ?」
「いや、オレは特にだと思う。」
「特にって?」
「普通じゃないだろ?
オッパイを揉んだ感触味わいたくて、
女の子が喜ぶような揉み方マスターしたくて、
そのために小麦粉捏ねてる男なんておかしいに決まってるだろ!」
「いるんじゃない?そんなやつ。
あたしも…男…のを…咥えるの大好きで…
いっつもどうしたら男が喜ぶか…とか考えて…
バナナとかソフトクリームとか、
あと、ディルド、って知らないよねえ。
男のを型どったやつ。
そんなのを舐めて研究したり練習したり……
健なんかより、よっぽど変態だよ。女なのにさ。」
「男とか女とか関係ないんじゃね?
好きなものに夢中になるのに男と女の違いなんかないだろ?」」
「そっか。じゃあわたしたち似た者同士なのかな。。
二人そろって変態カップル?」
「なあ、鈴。」
「なに?」
「舐めて、くれないか?オレの。。」
「健も、いいよ、わたしのでよければ、ここ。」
「いいのか?」
「うん。揉み甲斐があるかどうかはわからないけどね。
せっかくだから練習の成果、見せてよ。」
「じゃあ、鈴も見せてくれる?研究の成果を。」
「いかせちゃってもいいの?」
「オレの、濃いから驚くなよ。」
「ちゃんと、味見してあげるよ。」
「鈴…」
「健…」
《ピンポンパンポン 館内の青環高校の皆様にお知らせいたします。
ロビー集合 5分前です。ドレスコードを確認の上、ご集合ください》
「や、っばい。集合時間。」
「ホントだ。着替えなきゃ。」