真弓との出逢い-1
それが確か17のころ。
その後、峰不二子みたいないい女にはなかなか会えなかったけれど、セックスまでたどり着いた女は、何人かいた。
バイクで一人旅の女って、欲求不満なんだろうって俺は思う。
バイクの振動で股間を刺激され続け、体を締め付けるライダースーツは、その圧迫感が癖になる。(男の俺でもそうだ。)
それを一気に脱いだ時の解放感も、たまらない。(峰不二子もそうだったろう)
だから、俺の誘いに全てを許す女が、今まで何人もいたんだ。
でも、真弓は別だった。
あの日、俺に声をかけてきたのは、真弓の方だった。
あの日、数キロ前から俺の後ろをぴったりと走ってくるバイクが、俺は気にはなっていた。
トイレにも行きたかったので、俺はウインカーを出し、バイクを左に寄せ、手で【先へどうぞ】と合図した。
そして路肩にバイクを止め、用の足せそうな場所でライダースーツのファスナーを下ろそうとしたが、布の部分が咬んでしまったのかなかなかファスナーが下りない。
俺は仕方なく、ズボンを強引にずらし、ようやくジュニアを取り出した。
(ふー。間に合った。)
すると、後ろで突然声がした。
「そこのお尻丸出しの男!ここは立ちション禁止だぞ〜!」
女の声だった。
(何をふざけたことを言ってやがるんだ。)
俺は、半分、頭に来て、ジュニアをしまいながら後ろを向いた。
しかし、ズボンは上まで上がっておらず、ジュニアの先端が出たままだった。
そんな状態のまま、声のする方を見ると、黒いレザースーツの女が立っていた。
髪の長い、若い娘だった。
「あ、やっぱり。思ってた通りだ。」
女は俺の方をじっと見て、ニコッと笑った。
(か、可愛い。。)
「何が思った通りだ、だ。」
彼女のかわいらしい笑顔に一瞬で癒されてしまった俺の声は、ジュニアを見られてしまったかもしれない恥ずかしさもあってか、情けないことにかなり上擦っていた。
「おしっこ。きっと、してると思ったんだ。」
(なんていうことを言う女だ!可愛い顔して。まだ、ガキなのか?)
「ど、ど、どうして、そんなこと、思ったんだ。よ。」
「う〜ん。。。女の直感、かな。わたし、結構鋭いんだ。」
彼女は笑いながらまだその場に立ったままだった。
俺は、ジュニアが木悪れたことを確かめてから、茂みの中を出た。
俺は彼女のわきをすり抜け、バイクに戻った。
バイクにまたがろうとした時、俺のバイクに近づいた女が言った。
「あ、やっぱ、このバイクだ。ナンバーもうん。」
「なにがやっぱ、だよ。」
「あのね、わたし、このバイク、探してたんだ。」
「俺のバイクを?」
「うん、って言うより、このバイクに乗っている人を。つまりあなたを。」
女は俺の周りをゆっくりと回り、俺の顔とバイクを交互に見ながら言った。
「俺を探してた?って、お前、誰だよ。」
「あ、驚いてる驚いてる。」
女は俺を指さしながらけらけらと笑った。
「いい加減にしろ。俺は行くからな。」
エンジンをかけようとすると、女が俺のバイクの前に立った。
「ダ〜メ。一人で行っちゃ。行くんなら、一緒に行こ。」
「一緒に行こ、って。。。お前、何者?いったい何考えてんの?」
彼女は俺の顔に自分の顔を近づけて言った。
「私の名前は鈴城真弓。現在17歳。この春、ようやく中型免許を取りました。」
「いきなり、今度は自己紹介かよ。で、俺になんか用?」
「さっきも言ったでしょ。あなたを探してたんだって。」
そう言うと、真弓という女は、また笑った。
「でも、まさかね〜。こんなに早くにね〜。」
目の前でニコニコしながら喜んでいる彼女の様子を見ているうちに、俺もなぜだかうれしくなってきた。
「で、俺を探してるって、一体どういうことだよ。」
「あ、やっと、ちゃんと聞いてくれる気になった。じゃあ、立ち話も何ですから、行くとしますか。」
「また、訳の分からないことを言って。行くって、どこに行くんだよ。」
「そりゃあ、お任せします。あとから付いて行きますから。」
「あとから付いてくる?どうやって?」
すると、真弓と名乗った女は少し前の方を指さした。そこには125ccほどのバイクが1台、止まっていた。
「あれ、お前のか?」
「そう。わたしの可愛いバイクちゃん。」
「さっき、俺を追い越して行ったやつか?」
「そう。お姉ちゃんのおさがりだけどね。」
(なるほど、話が長くなりそうだ。)
そう思った俺は、バイクにまたがった。
「行くぞ。」
彼女のバイクを追い越しざま、声をかけた。
女が慌ててバイクをスタートさせるのがサイドミラーに映った。
(さてと。。。で、どこへ行きゃあいいんだ?なんか、変な女につきまとわれた感じだ。ま、でもいいか。あんなに可愛い子と。そうそう、その楽しみもあったっけ。)
俺はフルフェイスのヘルメッ中で、思わずニヤケてしまった。
しばらく走ったが、どこという場所も見つからない。
(喫茶店?こんな山の中に?どうしたもんだ?)
そんなことを考えて俺がスピードを緩めると、後ろをついてきていた彼女のバイクがパッシングをして、俺のバイクを追い越して行った。
道は峠道に差し掛かり、右へ左へ、とカーブが連続する。
彼女は見事なバランス感覚でバイクを操り、さらに加速して峠を上っていく。
俺も、置いて行かれないように、スピードを上げたが、彼女の姿は次第に小さくなっていった。
(なんだよ。なんかのきまぐれかよ。)
俺は、少しほっとしながら、スピードを緩め、峠の頂上を目指した。
峠の頂上に着くと、人気のない展望台にバイクを止めて、彼女が待っていた。
「遅かったじゃん。さ、行こ。」
彼女は俺を手招きしながら、反対側の茂みの中へ入っていった。