片山未来(25)・谷山萌(18)そして尾野上冴(45)-13
俺への誕生日プレゼント。
尾野上冴がピロートークに織り込んできたのが、このことだった。
ケーキ屋のフランチャイズオーナーをしている経営元の社長が、社員を集めての飲み会席上で、新たなビジネス展開の懸案を口にしたそうだ。
ケーキ屋がそこそこ上手くいっているのを踏まえて、飲食関係の店をもう一店舗持ちたい。
居酒屋を開くつもりで、既に土地も目星をつけているのだが、運営を任せる人材がまだ見つかっていない──。
冴はそこで、
「バイトの子に適任者がいますよ」
間髪を入れず俺の名を挙げたのだという。
「過分な評価をして貰ったもんだな。何で俺を推薦した訳?」
「仕事面ではバイト中で一番デキる奴なのは間違いないもん。それに、エッチが巧い男って商売でも抜け目がなさそうだし。……もっともこれは飲み会では言えないポイントだったけどね」
「居酒屋か。性に合ってそうだけどな」
「その気があるなら、さっそく社長に取り次ぐ。あたしからも頼んで、いい給料保証させるから」
「冴ちゃん、まさか社長と寝てお願いする気じゃないだろうね」
「バカ。社長七十過ぎてんのよ? 勃ちそうにない爺さんよぉ。けど、あたしにはデレッとしちゃう程度にはスケベだから、きっと言うこと聞いてくれるわよ」
「うっわ、悪い女だな」
「亮くんに言われたくない〜」
「悪い女こそ信用しちまうタイプだよ、俺は。その件乗った。さっそく社長に話通しておいて貰うよ」
「さすが、話が早い。家庭持ちの亮くんって想像出来ないけど、実現に向けて尽力するね」
真剣な話なのに、冴はケツをポリポリ掻きながら言った。
俺にキスマークをつけられた肛門周りがムズムズするようだった。
「そんな事情で……俺は、未来の今後を支える点も考えて、話を受けました」
改まって敬語なんぞ使っちまったのが我ながらこそばゆい。
未来の瞳がキラキラとして真っ向から見つめてくるのもまた気恥ずかしかった。
しかし、それはムズ痒さと少々異なる感覚であると気づくのに時間はかからなかった。
俺はゾクゾクとした恋の疼きに全身を支配されていたのだった。
「それって……つまり、わたしのことを……?」
「みなまで言わせんなよ」
眼を合わせているのが限界に来た。ツンデレっぽい仕草だな、と内心で妙に冷静な突っ込みを自身へ入れつつ、俺はそっぽを向いた。
「言って欲しいの」
「じゃ、言うけど……」
度胸を固め、乗り出してくる未来に向き合った。