第三章 強姦事件-2
「ちょっとどいて下さい」
「へえ、可愛いんだな」
「いくつ?」
「急ぎますから」
「いいじゃない、夏休みだろう?」
そんな押し問答をしている時、そこに、目つきの悪い男がやってきた。
「おい、どうした?」
「あ、先輩。いい女を捕まえました」
「おお、いいじゃねえか」
「お願いです。帰して下さい!」
小枝子は声を出したが、太鼓とスピーカーから流れるレコードの音にかき消され、その声は近くにいる見物客にも届かない。
「あそこ、鍵は開いてるよな?」
「大丈夫です」
「よし、あそこに連れ込め」
「や、やめて下さい!」と泣いている小枝子を2人の男が両脇から抱え、その周りを3人で囲むと、目つきの悪い男を先頭にして、人目に付かないように裏から境内を抜けた。
「急げ」
「はい」
男たちは暗い路地に入り、小枝子は履いていた下駄が脱げてしまったが、そのまま引きずられ、周りに人家の無い空き家に連れ込まれた。
「お前ら2人、外で人が来ないか見張ってろ」
「分かりました」
家の中に電灯はないが。男たちの1人がローソクを灯した。ビールの空き瓶や食べ物の滓が散らばり、破れた畳の上に汚い布団が1枚敷いてあるのが見えてきた。
「お願いですから、お願いですから、帰して下さい」
小枝子は泣きながら頼んだが、「用が済んだら、帰してやるよ」と、目つきの悪い男はズボンを脱ぎ始めた。それを合図に「さあ、お嬢ちゃんも裸になるか」と男たちが浴衣の帯に手を掛けてきた。