あなたは皆と‥‥。(7)-3
何に対する感心なのかわからないあなたは、先の白香にんまりの理解不能と合わせ、軽い嫉妬を覚えることになっていた。が、そのやりとりはそれきりで終わったし、紅香には紅香の世界があることは理解できたから、口を差し挟みはしなかった。第一、あなたは肉体的にも精神的にも疲れ果てていて、深く突っ込む、または理解する、余裕がなかった。
玄関のドアは、TV用の製品を改造したリモコンによって、自動ロックされるように改造されていた。外からは普通に鍵で開けられるが、
(ま、魔改造‥‥。この女は、ほんとに恐ろしい‥‥)
スマホゲームのキャラデザの出所についても、
「海田くんにおっぱい吸われてるうちに、お姉さん、確信した♡」
と、ギャルゲのキャラデザと同一であることをやはり見抜いており、その恥ずかしいタイトルを正確に、あなたに耳打ちしてきた。
「あの人、あれでしょ? 『わあるど・おぶ・(ブルマと)体操服ッス 〜爆乳女子校生の世界〜』の人でしょ?」
「い、いや‥‥。あ、あれは――‥‥!」
「うふふ。なぁーんだあ、お仲間じゃないの、海田くん。――じゃあ、また吸ってね♡」
白香はそれだけであなたから離れ、紅香以外の三人のところへ向かっていった。どうやら、紅香には告げ口はせずに済ませてくれそうな気配であった。
「お兄ちゃん、桃香、また咥えたげるね♡」
今度は桃香がそこからやって来て、あなたにそう言い、それだけで戻っていった。
あなたはショックでふらふらと歩いた。そして、リビングの隅の台に蹴つまずいてしまった。痛みはさほどでもなかったが、上の細長い花瓶が落ちやしないかと、あなたは我に返り慌てて手をそえた――。
‥‥幸いにしてそのような事態には陥らず、あなたは安堵してふと、その花に目を止めたのだった。紅香のやわらかな声がした。
「ありがとう。海田くん」
振り向くと、彼女の優しい、温かいまなざしがあなたに向けられていた。そして、
と、お礼まで言ってくれたのだった。
「――アマリリスっていうの、それ」
「お花屋さん」が夢の紅香は、あなたのそのほとんど無意識の行為で、あなたをより信頼してくれたようだった――ふたりから何を言われたのかは追及してこず、あなたは助かったのであった。その紅香は、夜更かししない習慣だという。そのまま、寝るからと白香の部屋へ消えていった。
精根尽き果てていたあなたもまた、あてがわれた紅香と桃香の部屋に入り、倒れこむようにベッドに入ると、すぐに眠りに落ちてしまった。文字通り「眠りに落ちる」という表現がぴったりな、急速な入眠であった。白香と桃香、そして片桐という男と彼が妙に下出に出る幸也少年の声が、戸外へ消えていった。どうやら、幸也少年宅に赴くらしかった。
まどろみゆく意識のなか、あなたは紅香がこの寝室に――できれば裸で――来てくれないものかと願っていた。それが昨夜の、最後の記憶だった。
あなたは、泥のように熟睡したのだった。