策略の赤い縄-4
「さあて、前戯はこのくらいでいいかな」
下半身を剥き出しにした江島が再び玲奈の前に立った。そして玲奈の壺口に自分の鋼棒の位置を合わせた。
「いくぞ」
「待て!」
幸弘が叫んだ。
「もうやめてくれ。イったじゃないか」
「はあ? ここからが本番だぞ? 文字通りな」
「もういい、十分だ」
「そうはいくかっ」
江島は抱きすくめるように玲奈の太股を抱えると、腰に体重を乗せ、ズン、と一気に彼女を刺し貫いた。その勢いで、彼女の潤みに潤みきった壺口から、粘液がジュブっと飛び散った。
「ああぁぁぁっ!」
仰け反って叫んだ玲奈のもとへ行こうとした幸弘の手を、仁来が掴んで後ろ手にひねり上げた。小柄な老人のどこにそんな力があるのか不明だが、それだけで幸弘はガックリと膝を突き、動けなくなった。
「ああ、玲奈……」
江島の腰が前後に動き始めた。
「見ろ、幸弘。今、お前の妻が俺に何をされているのか、しっかり目を開けて見るんだ」
赤い縄が揺れる度、江島の鋼棒が玲奈の秘めやかな壺口にねじ込まれては引き抜かれる。
「あ、ああ、あ……」
玲奈が口を半開きにして涎を垂らし始めた。
「俺に犯されて悦んでるんだよ、お前の妻は、お前の目の前でな。なのにお前はどうすることも出来ないんだ。ふはははははっ!」
加速するとともに動きを大きくしていく江島の腰。赤い縄を吊している滑車がギシギシと軋み、玲奈は翻弄されるようにグラグラと揺れている。
「ああっ、ああっ、ああっ、ああっ……」
太くて硬くて重い突き棒に突きまくられるお寺の鐘の様に、激しく腰を打ち付けられる度に玲奈は大きく揺らぎ、熱い吐息とともに声を響かせる。
「もっといい声を聞かせてやれ、幸弘に。それ、それそれ、ふんっ、ふんっ、ふんっ!」
「あ、あ、あ、あ、ああ、だ、ダメダメ、だめぇ……い、い、い、いい……」
「イクのか? またイクのか、夫が見ているというのに、俺に犯されてイクというのか、ええ? 奥さん」
「あ、あ、ああ……見てるのよね、見てるのよね幸弘さん。私、こんなことになってるのよ? 喜んでくれてる? ねえ、あなた……」
うなだれている幸弘が呟いた。
「……もう、やめよう」
「ん? なんか言ったか? 幸弘」
「もうやめよう、玲奈。こんなのはやっぱり間違ってる」
「幸弘さん……」
「やめるかよっ!」
江島が腰を大きく引き、玲奈の壺口に狙いを定めた。
「ま、待て、江島っ! もう……」
「おりゃあっ!」
「あはぁあぁぁぁーーーっ!」
ズン、と突き込まれた重い重い一撃が玲奈の体と心を刺し貫いた。玲奈の下腹部の奥に、熱い熱い疼きが湧き上がり、それはジュワーっと弾ける泡のような快感となって下半身を痺れさせ、身を仰け反らせて硬直した彼女の全身を微細な震えで包み込んだ。
やがて、ガクリ、とうなだれた玲奈はピタリと静止して動かなくなった。
「よし、交代だ、江島」
加際が江島と入れ替わりに玲奈の股間の前に立った。
「や、やめて下さい、先生」
「ん? 何か言ったかね、立野くん」
仁来にねじ伏せられたままの姿勢で幸弘が叫んだ。
「やめろって言ってるんだよ! もう十分だろ。十五年前のあの日から、どれだけ僕ら二人をもてあそんだんだ。せっかく悪夢から覚めて幸せに暮らしていた僕らにまたこんな歪んだ欲情を思い出させて、何が面白いんだよ」
加際はゆっくりと幸弘の方に振り返った。その唇の端には笑いがへばりついている。
「面白いも何も、これが僕の今の仕事だからねえ」
「仕事?」
「そうさ。そして、いったん受けた仕事は、途中で投げ出すわけにはいかないんだ。たとえそれが、依頼主の希望だったとしてもね」
「依頼主? それはいったい……」
「ふ、ふふふ……」
それは最初、何の音なのか誰にも分からなかった。
「ふふ、ははは、あははははははっ!」
「玲奈? なぜ笑っている」
幸弘の問いに、玲奈が顔を上げた。
「依頼主。それは……私よ、幸弘さん」