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お互いに「どこに」住むのかを聞かない関係は
未来の見えない関係で
別れるとはそういうことだ。
「真由花、ごめんな」
その言葉にはなんて返事をしたらいいのか分からない。
「私の方こそ」なんて言葉は絶対に言えないのが今の正直な気持ちで
やっぱり結婚すると思っていたこの年月は長すぎる。
何も言わない私に、頭を下げ続けるこーちゃんは
やっぱりずるいと思う。
それからの一週間はお互いになるべく顔を合わせないように時間をずらして
会社帰りに見て回った物件はなぜか毎回阿部さんがついて来て
私より条件にうるさい阿部さんに私は笑いながらついて行った。
「ねぇ?2つ気がついた事があるんだけど」
「何?俺の魅力に2つも気がついた?」
「・・・違うわよ。まず1、経管は暇なの?」
「暇じゃねーよ!」
だって、毎日のように18時に上がる私に付き合ってくれるから。
「2、今まで見た物件って全部阿部さんの家の近くじゃない?」
「それが第一条件だろうが?」
今更?的に、意地悪そうに笑って
物件探しの後のご飯を2人で食べる。
そしてその後、あのバーに立ち寄る。
私を必ず一番奥の席に案内する阿部さんを
マスターや常連の皆さんはくすくす笑う。
「確かに!こんな阿部くん初めて見た!」
私の事、と言うより阿部さんの私への態度がそのバーで噂になっているようで
常連さんが日を変えて私たちを見に集まった。
「その前に・・・ココに女の子を連れてくること自体、初めてだけどね」
そうマスターは阿部さんをからかった。