監禁-1
「ガラッガラッ」、体育用具室の重い引き戸をきしませながら開ける音も遠く離れた教室には届かない。室内の埃っぽいにおいと線引き用の消石灰のにおいがなぜかその時は不快に感じなかった。室内はかなり広く,いろいろの体育用具や運動会用具などが片側半分に置かれていた。
奥の方に置いてある飛び箱の横にM子を下した。室内を見渡すと運動会で使う二人三脚用のタスキの束があったのでそれでM子の手足を縛った。口に押し込んだタオルが外れないようにタスキをつないでタオルの上からぐるぐる巻きに縛った。
体育用具室は教室からは遠い場所にあるので誰も来ないとは思ったが淑子がM子を探しに来ないかビクビクしながら息を殺して長い間じっと潜んでいた。自分の心臓のドキドキする音が聞こえた。
20分くらいそうしていたのだろうか。ものすごく長い時間そうしていた気がする。信男に言われて幸治が外の様子を見に行った。教室にもトイレにも誰もいなかった。淑子は一人で帰ったらしい。今や俺達を止めるものは何も無かった。遠くの道路を走るトラックの音が聞こえた。
それからも3人は信男の指図に従った。M子を押さえつけている部屋の奥の方は薄暗かったのでM子を明かりが差し込む小さな窓の下に運んだ。電灯をつけると外が薄暗くなると窓から明かりが洩れて遠くからでも分かるのでつけなかった。
この時期は午後7時過ぎまで明るかった。暗くなるまでまだ3時間くらいあった。
跳び箱の傍に置いてあったマットレスを引きずってきてその上にM子を座らせた。恐怖に怯えた声でM子は呻きながら手足を縛られたまま立ち上がろうとした。