白香語り(2)-1
桃香を調教することは、以前から決めていたことだ。が、それはそれとして、わたしは、別のネタもまた、握っているのだ。この間、紅香調教の時期の終わり頃‥‥。
(――悪いけれどね‥‥)
わたしが空けている間に、家で、桃香が得意げに紅香をベッドに連れ込んでいたのだった。事前はおろか、事後もわたしには一言もなく。
(聞いていたのよ‥‥)
わが家の各所には、盗聴器をしかけてあるのだ。紅香と桃香の部屋も、例外ではない。妹たちには悪いけれど、情報収集はぬかりなくやっておかなくてはならない。
(――わたしを甘く見ないでね、桃香‥‥)
とは言っても、録音した全部を聞く時間があるわけじゃないから、妹たち、特に正直者の紅香の態度で、何かあるな、と感じたときだけ聞くようにしている。この間、それをやって的中したというわけだ。ちなみに、その盗聴器も、あの「研究室」を通して格安で入手したものだ(ちなみに、桃香に言ってある監視カメラ≠フほうは、嘘だ。それっぽい物を置いてあるが、中身はなく、動作はしない)。
いまは、黙っておいてある。わたしの許可を得ずにわたしの
(――とすると、紅香のほうを‥‥? ――あ、そうだ‥‥)
考えを進めるわたしの脳裏に、ある悪戯なアイデアが浮かんだが、実行するとなると、もう少し先、少なくとも桃香の集中期間の後にすべきことだった。忘れないように、どこかに書きとめておくべきだろうか‥‥。
さて、あの研究室で――。
「片桐さん、いま、よろしいでしょうか?」
「? はいはい、何ですか、白香クン」
紅香や桃香に言ったかは忘れたが、わたしは、名目上、あの研究室で、ごく短時間のバイトをしていることにもなっていた。お金のためというより、できるだけ片桐さんや研究室の人たちに食い込み、そしてあの装置――催淫装置の動かし方を、少しでもわがものとするために。
大人の世界というものは、そういう名目があったほうが、何かと動きやすい。わたしは定められたアルバイト時間以外もあの研究室に居残り――居座る時間を徐々に長くしつつ、それら必要な自分の「仕事」をこなすようにしていった。