ザ-3
「帰るけど、山田さんは部の打ち合わせでしょう?」
「いや。いい。のぞみが帰るなら送ってく」
部屋越しに大声で帰る相談をしないでほしい。
この居酒屋、本当に社の専用だな。
ん?と言う事は
「隣は経管?」
「そうだよ」
ざっと見った時、知ってる顔はいないと思ったけど
慌てていたからかな。
しかし。
彼氏と隣の部屋でよく飲むよね。
こっちの話が聞こえてるかもしれないじゃん。
私たちの呼びかけて、飲み足りないメンバーを残して大座敷の方もお開きになったようで
お店の入口は大ぜいの人でごった返していた。
じゃぁね、と今まで飲んでいた同期にも
大座敷で飲んでいた知り合いたちにも挨拶をして
「さて、帰ってパックでもするか」
金曜日の夜のルーティーンを思い浮かべる。
「その前に、まだ時間があるなら、さっきのお詫びをしてほしいな」
笑いをこらえた声で後ろからそう声をかけられた。