開中 向けられた疑いの目-1
「そんな言い方……っ……」
嘘をついてるわけじゃない。
しかし、眉をひそめたまま口を挟んでこない麗や焔も自分を疑ってることは間違いなかった。
「……なんで、私がそんなっ……」
「落ち着け。くまブラ」
「せっかく普通の学園生活が送れるって楽しみにしてたのにっ……!
変な人に絡まれて、閉じ込められて……今度は嘘つき扱い?」
「いい加減にしてよっ!!」
「まりあ!」
焔の行動も頭に来るが、慶と麗の親密さをまじまじと見せつけられたまりあは激情に流されるように走り出した。
「あんな嘘つきが”マリア”? もう見る影もないですわね。麗さんも焔さんも人違いなさっていませんこと?」
小さくなっていくまりあの背を睨みながら慶が美しい己の髪を手の甲で払う。
「……追わないのか? 麗」
慶の言葉が聞こえないとばかりに麗に声をかける焔。
「…………」
「まりあの話が本当だとしたら……相手はあの煉だぞ」
「煉に真意を問います」
静かにそう告げながらまりあとは反対方向に足を向けた麗。その後に続こうとする慶の腕を焔が掴む。
「……なんですの?」
慶の口調や態度を見る限り、焔よりも麗になついていることは明らかだった。
「体だけの関係のお前が麗をモノにできると思うな。あいつにとっての”マリア”は……」
「あら……まりあさんに体の関係も受け入れてもらえない焔さんよりは良くなくて?」
「…………」
なにも言い返せない焔。
すると勝ち誇った笑みを浮かべた慶は彼の手を容易く振りほどき麗を追って共に消えて行く。
「クソッ!!」
取り残された焔は低く呻きながら拳を強く握りしめた。