裏切り (6) 妻の浮気心-4
「Zくんとは、その、何度もエッチしてるし。だからOKってことはないんだけど、でも大人のデートだしキスだけならしてもいいのかなって……つい」
「大人同士、少しくらいドキドキを楽しんでもいいじゃんって感じ?」
「そうなのかな。そうかも……ダメなのはわかってる。でもZくんとなら万が一バレてもパパは許してくれるかもっていう甘えも正直、あります……」
少し神妙な面持ちになって素直な浮気心を告白するゆき。
たまらない――夫のことをきちんと愛している清く正しい人妻が密かに抱く浮気心。
「嬉しいな、俺とキスしたいって思ってくれてたんだ」
こくんと頷く妻。
「逆にキスだけで終わっても良かったの?」
「うん」
「本当?」
「……うん」
いたずらっ子のような笑顔を見せるゆき。
「ゆきさん、顔に嘘って書いてある。最後までしたかったんでしょ?」
「触られて気持ちよくなっちゃったらそうなるよね?私のせいじゃないよ、Zくんのせい!」
ムキになって反論するゆきが可愛いくて辛い。
「あぁもう、なんでZくんとこんなことしてるんだろう……悔しい!自分でも信じられない!」
「ゆきさんがエッチだからだよ」
「んーー!」
ぎゅーっとZの前髪を引っ張るゆき。
しかしZのこのシンプルな指摘がすべてだ。私のことを愛しているゆきと、Zと浮気するゆき――どちらが妻の本当の姿なのかここ数日、いや、今日もつい先ほどまで悩み苦しんでいた。しかし答えは「どちらも本当のゆき」なのだ。
「いてて、だってゆきさん、本当のはじめのはじめはランチすら断るつもりだったでしょう?」
「うん」
「それがランチだけならいいかなに変わって」
「うん……」
「その次は観覧車に乗るだけ」
「まあ……」
「その次はキスだけのつもり」
「はい……」
「で、今は俺とセックスしてる」
「……」
Zにからかわれて、しかし反論できずに困っているゆき。
「エッチなことしたいって思うことは悪いことじゃないですよ。自然なこと、素敵なことだと思います」
「Zくんに言われても……」
「ゆきさんはOさんのことを愛してるとってもいい奥さんだと思います。でも同時に、ゆきさんの中にはもうひとり『エッチなゆきさん』もいるんです、それでいいじゃないですか」
「いいのかなぁ……私はそれがちょっとショック」
ゆきの気持ちもよくわかる。貞淑な人妻には受け入れ難い「エッチな自分」を突きつけられ葛藤しているのだ。初めての公認デートの後に見せた涙と同じで、真面目なゆきだからこそ悩んでしまう。結局不倫した妻を「真面目」とは、私は甘すぎるだろうか。しかしそもそものきっかけを作った私にゆきを非難する資格はないし、なにより私はそこでキスしてしまう妻のことを愛おしいと思ってしまう。そういう性癖なのだ。
「ランチだけって思ってたのは『いつものゆきさん』、Oさんに内緒でデートしたりキスしたり、ゴムまで用意しちゃうのは『エッチなゆきさん』、どちらも本当のゆきさんなんだから、大切にしてあげてください」
「むーー……プレイボーイさんの口車に乗せられてるみたいで悔しい……」
ゆきの言うように、Zは自分に都合のいいよう言いくるめているだけかもしれないが、あながち間違ってもいない。
このZとの浮気から三日たった今も、ゆきは以前と変わらぬ笑顔で私に接してくれているし、毎日私と愛し合い精を受け止めてくれている――その行為に偽りはないだろう。しかし同時に、ゆきの心の中には、私以外の男との恋やセックスを楽しみたいという「女」が存在しているのだ。
二人はキスしながら優しく互いの乳首を愛撫しあう。
「ちなみにゆきさん、あのゴムってOさん用じゃないでしょ?」
「うん……パパ用のじゃ入らないかなって……買っておいたの」
「ゆきさんみたいなちゃんとした人妻さんが浮気用のゴム買う姿、ちょっと興奮しちゃいます」
「レジがママ友とかだったら嫌だなって思ってちょっと遠くのドラッグストアまで行っちゃった」
生々しい話をするゆき。
「エッチなゆきさん、やっぱり最高です」
「もう知らない……わかんない……」
都合の悪い話題をごまかすようにZにしがみついたままむっちりした尻をぐいぐい押し付けるゆき。「エッチな自分」と向き合うことから逃げ、目の前の性的快楽に身を任せる。ゆきが時折見せる「不誠実でズルい女」もまた、たまらなく色っぽい。貸し出しのときにも、風呂や和室、朝のキッチンなど、私の知らぬ間になし崩しでセックスを楽しむことがあった。
揺れる乳房の先端をZに弄られている。ゆきもZの乳首を刺激している。
「ぁああ!気持ちいい……!おっぱいとおまんこ両方気持ちいい……ぁあ!ぁああ……!!」
「旦那さんキスだけなら許してくれても、こんなことはさすがに許してくれないんじゃない?」
ゆきを裏返して四つん這いにするZ。人妻にとって最も屈辱的な姿勢をとらせ、容赦なく責め立てる。
「ぁん!わかんない……考えたくない……どうしようぁああ気持ちいい!」
尻を突き出してZに服従するゆき。シーツを掴んでよがり狂っている。
「Zくん大好き!もっと……ぁああ!そこ!……もっと突いてぇ!」