麗VS焔-1
「甘いぜ!」
麗の拳を易々とかわした焔が尚も嘲笑うかのように反撃の狼煙を上げた。
――ゴォッ!
腕に力を込めた焔の拳が唸りをあげて麗へと襲いかかる。
「……くっ!」
寸前のところで彼の攻撃を受け流した麗。着崩れていた彼のシャツが激しい動きに汗を滲ませていく。
「ちょっ……なにやってるのふたりとも……っ!」
元から水と油のような性格の二人は衝突が多いのかもしれない。しかし、原因がわからないまりあは戸惑いながらも止めるよう声を上げることしかできない。
「ガハ……ッ!」
何度目かの攻防で焔の蹴りによろめいた麗が痛々しそうにその綺麗な顔を歪め片膝をついた。
「先生っ!!」
「変態焔っ!! もうやめてっ!!」
飛び出したまりあの声にようやく動きを止めた焔は興醒めしたとばかりに腕を下ろす。
「チッ……またその呼び方かよ。失礼なやつだぜまったく」
心底不機嫌そうにこちらに近づく彼にまりあは続いて怒鳴る。
「し、失礼なのはアンタじゃないっ!!
いきなりキスするなんて……? あれ? 未遂だっけ……?」
あまりに突然の彼の行動に頭がついていけず、よく覚えていないまりあは自身の記憶力の弱さを激しく悔やんだ。
「未遂じゃねぇよ。お前の初めて(ファーストキス)は俺が貰ってやったぜ」
「覚えてねぇならもう一度してやろうか?」
そういうとさらに距離を詰めてきた焔に心臓が大きく跳ねる。
「や、やめっ……」
焔の炎のような瞳に捕らわれ、わずか数ミリ後ずさるのが精一杯なまりあの腕を焔が掴む――
「二度もさせるかっ!!」
直前、焔の腕を払った麗が強烈な拳を焔の頬に食らわせる。
「てめぇ……っ!」
口の中が切れてしまったらしい彼は血に滲む唾を吐きながら再び麗へ襲いかかる。
「……本当にやめてってば!! 馬鹿焔っ!!
それに私、ファーストキスの相手はあんたじゃないからっっ! 勘違いしないで!!」
「……なん、だと?」
「……っ!?」
まりあの思いも寄らぬその言葉に動きを止めた焔と麗。
「なに驚いてんのよ……あんたのお仲間でしょ!? 神崎煉って人!!」
今度は怒りに満ちた形相で焔に詰め寄るまりあはよほど頭にきているのか、ドスドスと足音を響かせながらやってくる。