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純白のマリアと漆黒のまりあ
【ファンタジー 官能小説】

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忍び寄る魔の手-1

「必要ないなんて……そんなこと……」

 知り合ってまだ数時間にも関わらず、存在の是非を問われてしまったまりあは戸惑いを隠せないのも無理はない。

(麗先生、そういえば最初からおかしかった。待ち焦がれていたとか……私のことを知っているの?)

 切羽詰まったような麗の瞳に思い当たる節はないかと自問自答するも心当たりといえるようなものは何一つ浮かんでこない。

「……っ!!」

 すると急に顔を歪めた麗の体が崩れ落ち、彼が手にしていたショッピングバッグたちが音を立てて地面にばら撒かれる。

「麗先生!?」

「く、っ来るなっっ!!」

 大量の冷や汗をかいた麗の口からは彼のものとは思えない罵声が発せられる。
 かろうじて片膝をついていた麗の体はガクガクと震え、足元から湧き出した真っ黒な影が彼に覆いかぶさるように巨大化していく。

「……っな、なにこれ!?」

「ガハッ……クッ!!」

 麗が苦しむほどにその影は勢い付いた炎のように燃え上がり、不気味な動きを繰り返したかと思えば徐々に形となって――

「……黒い翼……?」

 ゾクリとするような美しくも禍々しい漆黒の翼が今にも実体化しようとしていた。


――ドクン……


 すると今までにない胸騒ぎがまりあの心を荒立たせ、違和感を感じた瞬間、己の足はすでに走り出していた。

(やめてっ!!)


『彼を巻き込まないでっっ!!』


(……っ……!?)

 思わずその口から出た言葉にまりあ自身戸惑いを隠せない。しかし――

「……まり、あ……?」

 まりあに強く抱きしめられた麗の背から実体化寸前の黒い翼が瞬く間に弾け、淡く優しい輝きが彼を包んだ。

『……わたしのせいで……ごめん、なさ……い……っ……様――――!』

 腕を緩めた少女の唇から悲痛な声が零れ、その声に弾かれるように顔をあげた麗の頬を、まりあの瞳からあふれた大粒の涙が濡す。その光景に目を見開いた麗の瞳からもまた一筋の涙が流れた。

「……このくらい何でもない……っ……永遠に君を愛してる……マリア!」



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