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純白のマリアと漆黒のまりあ
【ファンタジー 官能小説】

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"エル"を奪われた大天使-1

『行かせないっ!!』

『この時をどれほど待ち焦がれたかっ……まりあ…っ……』

(麗先生……どうしちゃったんだろう)

 先ほどの出来事に戸惑いを感じながら教室に向かうまりあ。
 幸い、編入生の事も考慮されているのだろう。至るところに道標となる看板が置かれており、迷うことなく一年生の棟へ辿りつくことが出来た。

「…………」

(それにあの人、焔って言ったよね。俺の顔を忘れたとは言わせないって……人違いに決まってる!!)

 麗を思い出せば切なく胸が痛み、焔を思い出せば苛立ちが沸き上がってくる。
 複雑に入り組んだ感情を持て余したまりあが吹き抜けの天井をおもむろに見あげると――

「これって"大天使"様の……」

 そこには六枚の翼をもつ四大天使と呼ばれるミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの姿を象ったステンドガラスが光を通して輝いていた。

 そしてガブリエルが持つ百合の花にまりあは口を開く。

「百合の花って花びらが六枚に見えるけど……あれって額が三つ、花びらが三枚なんだよね」

「それが重なって、まるで六枚の白い羽……大天使様の翼みたい……」

 厳(おごそ)かな気持ちで大天使のステンドガラスを見つめるまりあの背後にひとりの人物が近づいてきた。

「大天使は六枚の翼という共通点のほかに……」

「"エル"がついてるって知ってたか?」

「……? あ、本当だ……そこまで気づかなかった」

「かつての大天使ルシフェル……"エル"を奪われたやつの名は……」

「堕天使ルシファー」

「堕天使ルシファー……? あなた詳しいのね」

 あまりそういったことに知識が及ばないまりあは、尊敬の眼差しで隣りに並んだ男を見上げる。

「"初めまして"まりあ。俺の名前は神崎煉(かんざきれん)」

「君を守護する一人の煉だ。よろしくな?」

 長い金色の髪にブルーの瞳を輝かせた青年が握手を求めてきたのだった――。


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