ママから逃げる-3
栞理さえいてくれれば、不思議とママの事が分かる様な気がした、この人は一体どういうつもりで順子の事をおもってきたのか、居場所が他にあるならそっちに逃げたくなる、この人と暮らしているとあたしが無くなる様な気がする、乗っ取られるような気がする、自分が無いように感じるの、それだけで十分な理由。
「これで決まりですわね、結局は順子さんが決められたことですから」
ママとこれ以上いたら病気が再発しないとも限らない、あたしには例えママを裏切ろうと順子を守らなければいけないし、栞理とだったらきっとうまくやっていけると思うもん。
この対決に比べたら、担任の先生から叱責を受ける位、何でもなかった、停学処分も栞理と一緒だからなんてことない、もっとも停学謹慎中に、弁護士の先生がパパのいる刑務所に出向き、「順子のママまで刑務所に入れられるくらいだったら」ッて、同意書に署名させたの、だって頑としてママは同意しないからパパを使った搦め手を使う、あたしもいけしゃあしゃあとそこに同席してやったもん。
辛いのは家庭裁判所に出向き、母親から虐待を受けていた事実を説明しなければならないってことだった、ママが逮捕されるの怖かったけど、弁護士の先生は裁判所の守秘義務を迫ればいいことだからと、それでもママを裏切ることに変わりがないのが辛かったな、でもおかげで許可審判書がすぐおり、それを持ち慎二お兄様と順子と栞理ちゃんで、裁判所に出向き、手続きの全てを終わらし、晴れてあたしは二条順子となったわ。
*
嬉し恥ずかし、あたし達二人が姉妹となったことは直ぐに噂となっちゃう、そりゃそうだよねって。
なぎなた部の部室で着替えることも、もうひと目を気にしないでもいいって、そんな解放感が嬉しい。
「なにお前ら、いつの間にお揃いのピアスなんてしてんだよ」
あの今日子先輩が驚いたみたいに栞理の乳首のピアスを引っ張るんだもん。
「痛ったいー、先輩抓まないで下さい、乱暴なんだから」
「いやっていうかー、順子までよ、うわお前のピアス太いのな、カワイイ顔しちゃってよー、義姉妹になったって聞いてたけどさ」
「はい……もう隠さないようにしましょうと栞理ちゃんに……諭されまして」
彼女がいうのはもうこれからはこのお揃いのピアスは二人の絆としてしていきましょうと、提案っていうのか、家族となったその日の夜にベットで言ってくれたの、外したりとか考えないで下さいって、もう彼女とっても積極的に順子のコト責めるんだから、いくらお姉さんになったからって、あんなに長くされたらって、ナニ思い出しちゃってるのかしら……
「なんかあやしー」
「二人して二条だから呼びずらくなっちゃった」
「ちょっと触らせてよ〜、JKが乳首にピアスなんてすっごいじゃない!」
部活の面々からからかわれるのも、嬉しくもはずかしくもあってねー。
「姉妹同士、恥ずかしがることなんてありませんわ」
そう堂々と言ってくれるお姉さんが、あたしにもできたんだなって、幸せだわ。
でもさ、幸せって長くは続かないんだよね……