激突-2
「ポリアンナ、ごめん。こんなの見せちゃって。」
「どうしてこんな事になったの?」
顔が歪み、全身穴だらけになったモデルの少女の前でポリアンナは泣いた。片腕は俺が見つけて、横に置いてあった。
アンカも蘭も、まるで死んだようだった。腹は裂けたまま、内臓が見えていた。
裸の女の死体が三つ並んだという部屋の光景だ。けれどもみんな生きている。比較的平常心で俺がいられたのは、絶対に大丈夫だとの自信があったからだった。
「どうしたらいいの?」
「医者には行けないよ。多分、治る。」
どうしようもないので俺は酒を飲んだ。嫌な気分だった。
二缶を一気飲みしたら、酔いが戻ってきた。気分が楽になったのは良かったけれど、並んだ女性器三つの眺めに俺は勃起してしまった。場違いなこと甚だしい。
「男って、信じられない!」
ポリアンナは怒って俺のものを見つめたが
「でも、しょうがないよね。」
そう言うと、俺の腰を跨いで座り込んだ。
「あ、ちょっと痛い。このごろご無沙汰だからかな。」
「ああ、あったかい。ていうか、熱い。」
久しぶりの、中学生のきつい腹の中だ。濃い腋のにおいがまた嬉しかった。
「ナースチャのこと、何か知ってる?」
俺の質問にポリアンナは
「ん? 小さい時、家でライオンを飼ってて、それを警察に撃ち殺された事があるんだって。ナースチャは、そのライオンと一緒に育って、寝るときもライオンのおなかで寝たり、泣くと舐めてくれたりして、大好きだったんだって。でも目の前でそのライオンは撃たれたんだって、何にもしてないのに。だから、動物を虐める人間は絶対に許さないって言ってた。あ、小さくなっちゃったよ。」
「私怨か。そのための組織か。そりゃ強いかも。」
先輩の話を敷衍して考えると、ハチ型の新型改造人間には、能力が発達したり展開したりしていく可能性があるようだ。それで、東欧教区はこんな子供のうちから改造したのではないか。
それはそれとして、ナースチャを俺の家に置いておくのはまずいだろう。組織に渡すのが一番だと考えた俺はマリエに連絡した。
「おい、ちょっと頼みがある。」
「何だよ。セックスならしないぞ。風呂はもう入ったけどな。」
「ロシアの新型、引き取ってよ。」
「お前、まさか戦ったのか?」
「違う。説明がめんどくさいけど、他の組織の新型二人と共倒れになった。俺のうちがロシアの方に気づかれたら嫌なんで、連れてってくれ。」
「敵の新型も居るんだな。ついでに引き渡してくれないか。」
「マリエさん、性奴隷にしてほしいのですか?」
「・・・考えとく。待ってろ。」
意外な返答だった。失敗だったかも知れない。こんな場合に不惜身命されては困る。仲間とナースチャを迎えに来て、目の前で二人を攻撃される事もありうる。俺は先輩に連絡した。
「もうマリエから聞いたぞ。安心しろ。そいつを公園に連れてきてくれ。」
「ポリアンナに頼んでおきます。よろしくお願いします。」
「ん? ポリアンナって、あのモデルの子か。実は、俺は少しだけファンになったんだ。本物に会えるのか。」
先輩も案外大衆的な人なのだと思った。
俺は自分のジャージをナースチャに着せ、ポリアンナに負ぶって行ってもらう事にした。ナースチャが軽い小学生でよかった。
ズボンを穿かせるとき、ナースチャの股間が、シジミのようにあまり綺麗で魅力的だったので、一瞬、開いて舐めてみた。
「ここがそんな事させるのね! 男って下品!」
「ひっ!」
「反省して!」
ポリアンナに力一杯睾丸をひねられた。本当にポリアンナは怒っていて、俺は暫く動けないほど苦しかった。
ポリアンナとナースチャが帰った後は、女二人の他殺死体を見ながら酒を飲むような、異様な時間になった。誰かに見られたら即刻通報だろう。
改造人間なのだと納得した上でなければ、俺自身、気持ち悪くて堪らない光景である。
裂けた乳房の中身やら子宮そのものやらを見ても嬉しいものではない。潰れたり焼けたりした美人の顔など、凄まじい眺めだ。ちなみに、あれだけ鍛え込んであるアンカの体にも、女性は脂肪が多いものだと知った。
とは言え、二人は死んでいる訳でなく、目に見える速さで傷は修復されている。蘭の回復のスピードは、アンカよりずっと速かった。
これから俺たちはどうなるのか。その晩、俺は一人で焼酎の一升瓶を空けてしまった。それでも酔えなかった。