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わるい娘、メンヘラビッチとの出会い
【学園物 官能小説】

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二条栞理さん-4

 順子が印象に残っているのは、玄関のアーチに使われているオベリスクが薔薇と凌霄花が絡み合うのが忘れられない、棘のある美しく咲く薔薇に木根と呼ばれる根を張り、棘と一緒に絡み合い、花を咲かせている、蔦状の植物はお互いに傷つけあいながら、かろうじて立っているような危うい状態だった。
「お気に召して? さあ中へ、兄を紹介いたしますわ」
 栞理ちゃんの話だと、お兄様は外交官だそうで、今は一時的に帰国し、一ヵ月後にはクロアチアに戻らなければいけないらしい、それにしても外交官なんて方、初めて会うのでどきどきしてる。
「こ、こんにちは、初めまして、お邪魔します」
 印象としては目鼻立ちの通った美麗うるわしい美男子よ、でもそのハンサムな顔より印象に残ったのは、栞理とのその距離の近さみたい、兄妹だというのに、ぴったり寄り添って、
「兄の慎二です、どうぞ愚昧をよろしく」
「お兄様と初めて出会ったのは一年前で、それ以来親以上の人だと思っていますのよ」
 挨拶にしては強烈じゃないかしら、親と暮らさずに、実の兄と一緒に暮らしてるなんて、どうみても複雑な家庭ですって、そこまであたしなんかに話してくれるなんて、人の秘密を知ることにはちょっとした魔力みたいなのがあるんじゃないのかしら、なにかこの二人に惹かれていく順子だったの。
「栞理さんの同級生で葛西順子といいます、何の手土産も持たず不躾で申し訳ありません」
 なんだか身分の違いみたいなもの、見せられたみたいな気がしてね、本来のあたしなんて駄目駄目な娘なのに、分不相応で恥ずかしいっておもっちゃう。
「生徒さんがそんなことを気にすることは無い、こちらが勝手に呼んでおいて、かえって申し訳ない、どうぞご自分の家だと思ってくつろいでください」
「お兄様、今お茶をお入れします」
 部屋に二人だけ、男の人と二人だけにされると落ち着きをなくす順子だけれど、この二条慎二さんという方には、そういった嫌悪感みたいなのを抱かないの、
「君は語学が非常に堪能だそうだね」
「堪能だなんて、そんな、ただ母から……英検や独検を少し」
 やらないと酷い目に遭わされてきた、あたしと語学の関係なんてそんな特別なものじゃない、まあ勉強には役立っているけど、そんなとくべつなものでもなんでもなかったもん。
「ほう……高校生で独検も……一級かね?」
「ええ……」
「ふうむ、すばらしいね」
 何がすばらしいんだか、そういう人はママのことを知らない大人が言うこと、まあどうでもいいか。
 コンコンッ ノックをする音だった。
「失礼します」
「この香りは……トルコ式コーヒーだね、栞理もようやくきちんと入れられるようになったのだねえ」
「まあお兄様ったら、葛西氏の前で変なこと言わないで下さらないかしら」
 聞いたことがある、セルビア語での授業のときだ、オスマントルコの支配下にあった地域ではトルコ式コーヒーが普及し、今でもそれが色濃く残っていることを。
「セルビアでも飲まれるのですよ、このコーヒー」
「これは驚いた、君はもしやセルビア語まで知っているのかね」
「いえ、全然まだ話せるレベルなんかじゃ……」
 駄目駄目な自分が更に貶められている気になっちゃう、こんなあたしに親切にされるとあたしは素直に受け入れることができない、ひねくれていて、どうしようもないの、裏があるんじゃないか、騙されているんじゃないのか、パパがそうだった見たく、他の人もそんな目で見ちゃう、ほんとにクソみたいな性格なの。


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