〜吟遊詩(第四部†砂漠の国ディザルト†)〜-11
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(絶望か……───ごめん。ユノ…)
かすれゆく思考の中でエアルは考えていた。
「good bye.ブラインドチェリーの雑魚キャラ」
(……待て待て!今、俺(エアル)に向かってブラインドチェリーって言ったか!?)
真っ暗な視界の中、ナオの声がやたら響く。
(━━━…やたら響く。じゃなくて!!なんで俺がBC呼ばわりなんだよ!)
諦めかけたエアルの頭の中に光が差した。
ナオは不気味に黒光するサングラスの下でニヤッと笑い、引金を引いた…。
━━━キュ────ンッ!!
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━━『ガチャンッ…』━
ナオは持っていた拳銃を思わず落としてしまった。
「な、なんで銃弾が逸れるんだよ!!」
ナオはエアルに向かって叫んだ。
ナオの放った銃弾は、エアルに当たる寸前で軌道を変え、空高く逸れてしまったのだ。
「感謝するぜ、ナオ。お前が俺を撃ってくれたおかげで その血で印を結べたんだからな」
見ればエアルのうずくまっていた辺りの砂が赤く染まり、円形の印が結ばれている。
ブレッドは血で印を結ぶ事により、通常の能力では賄えない事を可能にするのだ。 第一部でセナ(じぃちゃん)が印を結んで若返りの術を使ったが、あれもつまりはこう言うことだ。命と引き換えになると言う、極端な例ではあるが。
「どう言うことだ?お前のブレッドは何だ?何の印を結んだんだよ!?」
ナオは更にエアルに叫び続けた。
「俺のブレッドはバルーン。重さの変換が仕掛けさ。印で俺の周りの空気を重くしたんだ。玉は空気の壁にぶつかると同時に……」
「玉の方が空気より軽いから上に逸れる…?」
エアルの説明を受け継ぐようにナオが言った。声に出す事によってその原理を理解しようとしているようだった。
「そゆこと。」
エアルは流すように軽く答えたが、重くなった空気は相当の圧力をエアルにかけていた。呼吸さえ満足にままならないのが事実だ。
さらに怪我をした腕の痛みもエアルを襲う。
ナオは銃を拾いあげ、試しにもう一度撃ってみた。
(手応えなし………か。)
結果は変わらず、銃弾は虚しくエアルをすり抜けた。
「ナオ!!」
ナオの気が済むのを見計らって今度はエアルが叫んだ。
「ナオ、俺はBCじゃない」
「はっ?宮殿からあんだけ良い待遇を受けといて何が『俺はBCじゃない!』だよ。片腹痛いわ!」
ナオはエアルの声色を真似て馬鹿にするように言った。
「何で宮殿とBCが関係あんだよ!?宮殿に追われてるお前の方こそBCじゃないのか!」
エアルはわけが分からなかった。多分それはナオも同じだろう。