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わるい娘、メンヘラビッチとの出会い
【学園物 官能小説】

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江戸蔵高校なぎなた部-4

「興味を持っていただけましたか? ほらご覧になってください、二人の間合いを、先ほどより半歩ほど距離が離れられているでしょう? 二人とも警戒しつつ、色々と罠を張り巡らせているのです、それも数手先の先を取らんがために、ほら隈本選手が右足の送り足で荷重を左に移動させました、今日子の右に入り、隙を見つけようとしているのです、それに対し今日子は逆に左に荷重をほんの僅かだけ移動させ、自身の制空権に捉えて後の先を狙っています、もしここ瞬間に隈本選手が技を出したなら、勝率は僅かですが今日子が上回るでしょう」
 そのほかにも視線、リズムを崩すような足運び、身体の筋肉の動きにすら、お互いを騙し嵌める高度な嘘の応酬があるんだって。
「やぁぁああ!」
「応!」
 気合を使い、時に対手の技をさそう、もしくは遅らせようとする、二人はまるで蛇のよう、二人の戦術的駆け引きは、騙しあい、兵の考えることって蛇影を追うようなものよ。
 状況が拮抗しているように見える、ひりつくような緊張の中だったの。
 薙刀特有のすね技を警戒していた隈本選手の竹刀が一瞬中段に構えられたときだったと思う、思うって? だってほんとうに、ほんとうにあっという間の出来事だったから……
 今日子先輩の切っ先が蛇のように竹刀に絡みつき釣り上げるみたくさ、相手の竹刀を飛ばすの、その瞬間は二人の選手が万歳をしてるみたく見えて、それなのに隈本選手の竹刀が道場の天井に当たる音が聞こえた。
「隈本ぉぉぉぉ〜〜〜!! 武士の情けだ」
「なにぃ……」
「スネェェェェ!」
 ぱあぁん! 乾いた音が道場内に響く。
「一本」
 主審の旗が上がる。
「やったわ、今日子さん、巻き技じゃないの、竹刀相手にキメルなんてやっるー」
 思わず興奮したのか栞理さんとあたし、一緒に跳ねて、小躍りしちゃった。ああなんかいいなあこういうの、まだ部活をはじめた訳でもないのに、一緒になって喜びを共感できるのって、部活ならではよね。
 剣道対薙刀の異種戦は二本先取方式だ、日本トップクラス対手に一切の油断はできない。
「隈本選手、竹刀を回収して、そう……開始線に戻って……始め!」
 隈本選手の取った構えは上段なの、栞理さんの説明通りならば火の構え、最も攻撃的構えで、唯一撃の面のみを狙う、最も剣道らしい、誇り高く、おそらく勝率の高い技を捨て身で狙ってくるつもりなのと二条さんが説明してくれる。その対策は踏み込み面を抜いての返し技を出すのがセオリー、獲物の長い薙刀なら無理することはないの。
 しかし今日子選手は中段で様子を見、距離をとる……のではなかったわ……
 上段とも八相ともつかない、独特の構えだったわ。
「蜻蛉の構え……今日子マジになったのね」
 左足を前に、右手で柄に近い側を握り、左手で切っ先側を握り極めて長く持つ。
 勝負開始のときの鉄のにおいがした、切り結んだ瞬間のような対手の雰囲気のようでもあり、それでもその絡み合う殺気は洗練されているようだったの、静謐な冬のにおいがし、秋空見たく澄んでいる、春の青葉のさわやかな、それでいて夏の燃えるような、殺気同士が絡み合い、二人の剣士は全くの同刻、寸分たがわず、踏み込んでいたわ。
 隈本選手の竹刀が頭上を通過する前のほんとうに一瞬、
 今日子が袈裟懸けに、一閃、
 ぱーーーんっ


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