梨花-35
「どうして? 私にするのだけ好きで自分がされるのは厭なの?」
「ああ」
「自分がされて厭なことは人にもやらない主義だったんじゃないの?」
「お前つまんないことだけ良く覚えてるな」
「そうよ。でもいいわ、許して上げる。私浣腸されるの厭じゃないから。でもオサムも1回くらい試してごらん。案外気持ちいいものよ」
「いいよ。俺は気持ちいいこと沢山知っているから、これ以上はいい」
「なんて言っちゃって、恥ずかしいんでしょ。もう私オサムの奥さんなんだから恥ずかしがること無いのよ」
「別に恥ずかしがってない」
「そう? だったら1回やってみましょうよ。やらせてよ。私いつもオサムに綺麗にして貰ってるから、なんか悪いなって思っちゃう。今度は私がオサムのこと綺麗に後始末して上げるから」
「いい。そういうことはお前みたいな美人がやるべきことじゃ無い」
「またまたぁ、オサムはうまいんだから」
「いいや本当だ。お前みたいな美人で可愛くて魅力的な女性はそれにふさわしくないことはやっちゃいかん」
「なんか必死になって褒めてるわね」
「別に必死になってない。日頃思っていることだから自然に褒め言葉が出てくる」
「あのさ・・・」
「もういい。今日は猿ぐつわして縛ってやるぞ。口を利けない方がお前は可愛い」
「あんなこと言って。都合が悪くなるとそれだもん」
「ついでにあそこの毛もまた剃るか。もうだいぶ伸びただろう。それですっぽんの入れ墨でもするか」
「厭だ。なんですっぽんなの?」
「お前は食いついたら死ぬまで離さないから」
「それですっぽんなの? どうせならもっと綺麗な物入れて欲しいな」
「冗談だよ。第1俺が入れ墨なんて出来る訳無いだろ」
「あれ? 入れ墨って嫌いだったの?」
「いやいや、そうじゃない。入れるとしてもちゃんと専門家にやって貰うっていう意味だ」
「ああ、そうか。じゃやっぱりやるのね?」
「いや、まだ考えている。タトゥーって嫌いじゃないが正直言ってそれ程興味がある訳でも無い。それにやるとしたらあそこより肩とか乳房とか太腿とかの方がいい」
「どうして?」
「どうしてっていうことも無いけどなんかあそこに入れ墨っていうのは俺の美意識にしっくり来ないんだ」
「そう? 私は何処でもいいわよ、オサムがやりたい所で」
「それじゃ瞼に目玉の入れ墨するか」
「何それ?」
「寝てても起きてるように見える」
「気持ち悪い。私は分からないからいいけど見る人が気持ち悪いじゃないの」
「いや、面白いかも知れないぞ。私には眼をつぶっていても貴方が見えるってな、そんな詩があった」
「その人も眼の入れ墨してるの?」
「違う、違う。眼を開けると景色が見える、眼をつぶると貴方が見えるってそんなような詩で、つまり景色と貴方だけが私の世界のすべてなんだっていう意味の詩だよ。目蓋に入れ墨してる訳じゃない」
「それでその目蓋の入れ墨をほんとにやるの?」
「いや。そんなことしたら俺、うなされそうだ」
「そうよ。一緒に寝るの気持ち悪くなるわよ」
「ああ。いつ見てもぱっちり目覚めているみたいに見えてギョッとするな。ちょっと気持ち悪くなってきたから今日は目隠ししてやろう。眼隠しして猿ぐつわして、それから大の字に縛ってやるか」
「オサムは大の字に縛るのが好きなのよね」
「それが1番解放的でセックスを楽しむぞっていう感じになる」
「SMって解放的と言うより本当はもっと陰湿でネチネチした感じのものなんじゃないかしら」
「分かってるじゃないか」
「それはそうよ。お陰様でSMの経験も随分積んだから」
「それじゃ大の字に縛ってからネチネチ責めることにしよう」
「うん、それがいい。解放的にしかもネチネチやろう」
「ネチネチやるのは俺がやるの。お前はネチネチされるの」
「うん、ネチネチされよう」
「どうもお前は言葉がちょっとおかしいな、まあいいか」