片山未来(25)その2-6
アパートの階段を降りるとき、お隣の谷山萌とすれ違った。
「よっ」
声をかけると、ジト眼で睨み返してきた。
未来を伴って事後の匂いプンプンさせているのだから無理もない。母親ともども俺のセフレと化している萌にとって、他の女はいくらか嫉妬の対象になるのだろう。
「誰? あの子」
最寄りのコインパーキングに向かって歩きながら、ちらちら後ろを振り返って未来が尋ねた。
萌の奴、まだ俺らのほうを見てやがった。
「隣に住んでる淫乱女子大生。母親もエロくて、一緒になって俺に全穴捧げてくれてんの」
言ってやると、未来はムッとした顔で再び後ろをかえりみた。
二人のビッチが視線で火花を散らし合ったようだった。
乗り込んだ黒のアクアのウインドウを下げ、名残り惜しそうな目つきを送る未来だった。
「手配ついたらすぐ連絡するから、禿オヤジに伝えるんだぞ」
「うん。上手くいくといいけど」
「未来のこと守るって言ったろ。ついでにとびきり面白いショーにしてやるから、楽しみにしてな」
モーター音をフイフイ立てながらアクアは出ていった。
「ちゃんと前見て走れ、ばか」
いつまでも俺に手を振る未来に苦笑いしつつ見送った俺は、
「さて……ショーのお膳立てに動くとしますかね」
引き受けたからにはとことん楽しみながらやらねば、と胸を躍らせた。
さっきすれ違った萌の顔が浮かび、それを企画の中に組み込んではどうかとアイデアが膨らんだ。
──まずは舞台の確保。それから萌にもオファーだな。
早速、スマホを取り出して、検索エンジンを起動した。
──経費はかかるが、なるたけデラックスな会場を用意してやろう。
俺は都内の高級ホテルを物色し始めた。