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よだかの星に微笑みを(第二部)
【SF 官能小説】

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豊かな日常-2

「気づかれたか。気配が消えた。でも、まだ中にいるはずだ。ショックウェーブでマンション上部を一斉に破壊する。飼い犬なんか、居ないな。」
「動物はいませんが、岡田さん、何か仕掛けられました。おそらくバリヤーです。」
「ふん、逆に言えば、敵は逃げるタイミングを失ったということだ。」
「逆でもなんでもないわ!」
「ぐわっ!」
既に真横にいた俺は、岡田の変な言葉遣いに腹が立ち、殴りつけたのだが、うっかりステルス機能を解いてしまった。
酔っ払いの蜂パンチではカブトムシ岡田は倒れなかった。漫才のどつきみたいになってしまって、カブトムシが頭を抱えただけだった。
「ウラジーミル=ナボコフ! またあんたか! 今度はなんだ! また酔ってるだろ。」
「ナボコフって言うな。人に誤解される。高橋さんとかマリエとかに言われて来たんだ。お前、勝手に行動してるだろ。関係ない人、巻き込むんじゃねえよ。」
「敵の新型はどうなった? 」
「中にはもういないよ。ついでに、敵の新型は別人だ。」
その時
「何やってるの?! 早く来て! あ、出ちゃう!」
何もない空間から声が聞こえて、引っ張り上げられた。ステルス機能を思い出した俺は消え、入れ替わりに、空間から大量の下痢便が岡田の頭に振りかけられた。
「わあっ! どうなってる? 攻撃しろ!」
「消えました。女の声が聞こえたような」
「知らん! ウラジーミルはどこだ?」
「だから消えました。あの人、仲間だと思うんですが、異様な殺気があるの、先輩、気付かないんですか。よくあんな人の前にいられましたね。あと、それ、うんこですよね。敵の攻撃とは思えない。」
いつかの、空気の読めない女だった。
「くそ! 帰ったら遺伝子を調べてやる。」
天気は悪かった。稲光が見えている。それに呼応するかのように、何かが俺にも「閃いた」。
「弘前君、手、しっかり握ってて! もぞもぞして何してるの?」
回線を通してアンカに言われたが
「一瞬だけいい? 罰を与えとかなきゃ。」
「きゃっ!」
上空に雷鳴が轟き渡った。そして青い稲光が幾筋も雷電となって降り注いだ。それが虫の一人一人を貫通し、虫は全員落下した。岡田も勿論だった。アンカのうんこは炭になった。
落ちた虫はそれぞれ人間に戻って倒れていた。裸の若い男女、三十人ほどが見える。
「アンカ、蘭、どこ?」
「弘前君こそどこなのよ? 大技なんか使って。逃げるんでしょ?」
「今の何? あたし雷嫌いだから見てなかった。びっくりしておしっこ出ちゃった。アンカもうんち漏らしたよね。」
「誰も見てないからいい。」
一人ステルス機能を解いた蘭は、裸の生身で空に浮いている。さながら、スタイルのいい幽霊に見間違うところだ。
「もう、いいか、そのままで。」
俺もアンカもステルス機能を解いた。俺たちは並んで飲み屋へ飛んでいった。


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