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よだかの星に微笑みを(第二部)
【SF 官能小説】

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暗澹たる思い-1

「おい、新型、ちょっと手を貸してくれ。まんこ触らせてやるから。セックスしてやってもいいぞ。」
寝ようとしていた時にマリエから通信が入った。もちろん俺はかなり酔っていた。
「あのさあ、いいかげん名前覚えてくれよ。そろそろ最新型なんかもあるんだろ。ひろさきだよ、ひ・ろ・さ・き。あと、組織に手を出すなとか言っておいて、あんたからの連絡、多いよな。」
「うるさい、お前はまんこだ。あたしはお前のこと嫌いなんだ。組織のために連絡してるだけだ。」
「危ないこと嫌だし、これが人にものを頼む態度とも思えないし。」
「だからセックスさせてやるって言っただろ。」
「ポリアンナで間に合ってる。」
「岡田も付けてやるから。」
「あんなのとはしたくない。」
そこに別の通信が割って入った。
「お前ら、また子供の喧嘩か。話は進んだのか。」
高橋先輩だった。
「セックスさせてくれるとか」
「それが頼みじゃない! あたしがバカみたいじゃないか。」
「実はな、弘前、我々には対抗勢力がいる。うちらの組織がそこから分裂したんだけどな。そこの最新型が厄介で、手を貸してもらいたい。」
「えー?」
俺は大変渋った。先輩は続けた。
「対抗勢力の思想はシビライゼーションだ。完全に人間中心主義を取っていて、そのために世界を変革しようとしている。」
「それは先輩達も同じなんじゃないですか?」
「まあ、もともと同じ組織だからな。野生や自然は残さないほうがいいと思っている。ただ、我々は人間中心主義ではない。おかしな言い方になるが、生物人間化を考えている。だから、動物実験や虐待は認めない。」
その手の話は酔った頭には入ってこない。先輩は続けた。
「ハクビシン、どうなったか知りたいだろう?」
「高橋さん、それは」
マリエが遮った。
「これだけ言っておく。我々は基本的に生き物を駆除しない方針だ。お前も猫を助けただろう。どうだ、少しだけ協力してもらえないか。」
「何をしたらいいんですか。」
「対抗勢力の新型の邪魔をしてほしい。」
ついに巻き込まれてしまったと俺は思った。結局、俺はこの組織から逃れられもしなければ、いいように使われもする身なのだ。となれば、同時に敵側の目も引きつけざるを得ない。
「俺、変身の仕方もよく分からないし、戦って勝つ気が何にもしないんですけど。」
「ちなみに、対抗勢力の改造人間は脊椎動物からヒントを得てる。あたし達のテクノロジーよりは劣ってる。」
「どうでもいいよ、そんな話。」
「それと、喜べ。新型はどうやら若い女だ。若いまんこだぞ。いま画像送るから見ろ。」
「・・・トカゲじゃねえか。」
「正体見せるはずないだろ。」
「また具体的に話すつもりだ。頼んだぞ。」
「あしたまんこ触らせてやるから学校まで来い。前払いだ。じゃあな。」
通信は切れた。
画像を見直してみると、顔はトカゲだが、羽毛が生えているし、左手がいやに大きかった。
「まあ、いいや。」
そもそも、改造人間にされた事も、あまり真面目に捉えてこなかったが、俺の望んだわけじゃない。勝手に人生を弄られたようなものだ。考えたら腹が立つ。
しかし、運命とはそういうものだとも思う。事は勝手に身に起こる。そして、それに対処することで人生は展開していく。
ポリアンナに会えたのは改造人間にされたからだ。それは良かった。だが、組織とやらに関らされるのは嫌だ。
運命の出来事に好き嫌いを言うのは我儘なのだろうか。
人間は我儘な生き物だ。世の中を変えるとか、生活を変えるとか、例の組織ばかりでなく、みな人間は、自分の思う通りにやりたがるし、周りにもさせたがる。
楽をしたいからだ。
そう、俺も楽になりたい。例えば、この枕。何年も使い続けて破れている。買い替えるべきか、飲み代にその分を回すべきか。こんな所にも楽を求めるが、比較して何かを選べば、同時に、選ばなかった方に未練の苦しみが生じる。
俺はもう一度、トカゲの画像をよく眺めた。
「あーあ、どこにいるか分かっちゃったよ。なんだ、近いじゃねえか。こんなのと戦うのかよ。もう探るのやめとこう。」
暗澹たる思いのうちに、俺は眠りへと落ちていった。


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