あたしの処女喪失とは-3
だからママと顔を合わせるのがつらかった、裏切り者として、そ知らぬ振りをしなければいけなかったから。あたしは知らなかったの、隠し事をかかえて嘘を吐き続けるのが苦しいことを……だからあたしは順子を騙した、ハメた、信じさせた……一度でも、口にしないと誓ったコトを曲げては駄目なんだって、信念をどこまでも貫きとおさねばいけないって。
毎日が、生きていくことが大変だったわ。
今日の国語の小テストで80点取った答案をママに見せると、
「どうして何度もこういう小さなミスを繰り返すの順子ちゃん?」
「ご、ごめんなさいママ」
絶対にこうなんだよ、100点取っても褒められたことなんか一度も記憶にないし、むしろ欠点を見つけると、3秒でママは豹変するの。
「そんなんだから朝ごはんを暖めて食べなさいいて何度も言ってるのにしようとしないし、お味噌汁飲まないで、あてつけなの? そうなんでしょ、あんたはいつもそうだもんね、だから今日だってお前が飼いたいっていったハムスターのお世話を忘れるんだ?」
どきりとさせられた、一つのミスからママはありとあらゆるところからいちゃもんを付け出し、順子を責めるのだ。
「なにがペットのお世話をちゃんとしますって? 餌を与えるのもわすれるよーな馬鹿が! ばーかばーか、ペットを殺したいのかよ? バーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカバーカ……」
あたしの全てを否定されても、ママを裏切っているのは自分なんだからって、とことんまでママの言うような駄目な娘なんだって、つらく、重くしんどくてもそれを溜め込むことだけしか出来ないし……どんどん周りが暗く沈んでいくみたいだった。
ママの罵詈雑言が10分以上続いて、いつの間にか涙が出てきて、
「何泣いてる! 泣けば許されると思ってるのか! だったら本当に泣いているのか確かめてやる、順子、飼っているハムスター連れてきてここで生きたまま踏み殺してみせろ!!! 可愛いペットを自分で殺す時に見せる涙と比較してやる、さあやってみせろ!」
ママは切れだすと本当に怖いことをいう、ママに逆らうなんて、絶対に出来やしないじゃない。
「それくらいにしといてやれ」
難しい表情をしながら、あたしたち母娘のやり取りをじっと見ていたパパが口をはさんだ。
機関銃のようにまくしたてていたママが急にだまってしまい、驚いたというか、あっけにとられたって、耳が痛いくらいの静けさよ。その間に赤鬼の様に真っ赤だった怖い顔がさ、すぅーーーーと元のママの顔に戻っていくの、すごいパパ、ぱぱすっごいよ!