ママのしつけ3-1
●さなえちゃん、りさちゃん、かなえちゃんへ
お母さんにイヤイヤをして泣いていた順子を許してください、いけない子でした。
皆に迷惑をかけてはいけないので、順子はスイミングスクールを退会します。
皆さんは順子のように半端にならないよう、頑張ってね。
あたしの気のせいだろうか……幼心にもなんだかとってもこの手紙が嫌い、というかなんか罪悪感を覚えてしまう。
「順子ちゃん良く書けたね、じゃあこのお手紙、お友達の家に出しておくからね」
「え、ママ、お友達の住んでるところ、知ってたの」
「そうよ、ママは何でも順子のこと知っていたいの、心配しているんだからね」
そのときはそんなものかと思ったのだけど、これがずっと続くとか思ってもいませんでした。
結局あたしはママに上手く絡めとられ、英語教室に週4のペースで通うことになり、ちょっとでも成績が振るわなければ「バカな順子だ、ホントに私の娘なのかしら? こんな簡単なこともできないの順子? ばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーかばーか」そういってあたしが泣くまで恫喝し続けるんだ、逃げ場なんて無くって、ママに怒られないよう、ママの為に必死で英語に取り組むしかない、ううん違うわ、きっと順子のため、出来ないあたしが悪いんだから、ママの言われるまま、彼女に認められたくて、次々に課題を乗り越えていくしかなかったわ。
それでもいつまでたっても駄目なままだった、いくら積み木を重ねても重ねても、そこに温かいものはない気がするの、ママはもっともっとを要求するし、ゲームをさせてもくれるけど、よくやったねって褒めてもくれるけど、気持ちはガサガサで乾いていて、いつも満たされない、おなかが空いて何かが食べたいとかの欲じゃないよ、のどがカラカラに渇いてお水が飲みたくなるときの感じかなあ、そんなもの欲しさにずっと動かされ続けてきたような気がするの。
ちょっとだけ塾でトップの成績になったことがあって、ママ喜んでくれるかなって、ママに喜ばれたくって、
「ママ凄いでしょ、塾で一番の成績をとったんだよ、すごいでしょう?」
普通に喜んでくれればって、それだけだったし、子供っぽいかもしれないけど。
「ふーん、やっとここまでか……で、順子誰のおかげでここまでこれたの?」
あれっなんか、あたしの望んだ感じとなんか違うの、でも誰のおかげって言われたら……
「……ママ……」
いまでも不思議なのは、どんな顔してたのかな? あたしは想う、きっとぼやっとした顔してたんじゃないかなって、落胆したとかじゃなくって、ぽかんとしたみたいな。
「そうよだからこれからもママの言うこと聞かなきゃだめよ、あと順子だったらもっと上を目指せるからね、気を抜いちゃ駄目よ」
「……ハイ」
いつの間にかママから褒められたいとかって感じ、消えていた、ママの見たい世界とあたしの願う世界はいっしょにいられない、ママから言われることに逆らえないあたしは、ママの望むようになるしかない。