ウラジーミル-1
彼女がいるということは、人生の気分をこれほど変えるものなのか。俺は二週間も黙っていられず、大学の二人に飲み屋でうっかり話してしまった。
「そんな気持ちは最初だけやろ。すぐ別れるかも知れんしな。平常心がいいで。人間、一期一会や。」
風俗にだけ詳しい渡部が、さも当然のごとく言った。
「なんだ、後は俺だけかよ。まあ、女なんて別にいいよ。」
伊月はふてくされた。俺は
「ひいなさんが居るだろ。頑張ってくれ。」
「それはそうと、中二言うたら十四歳か。ロリコンやん。これからお前のことロリサキ呼ぼうか。」
「ウラジーミルにしようぜ。」
「それいいわ。『ロリータ』の作者な。お前、セックスしたのと違うやろな。犯罪やで。」
「そう言えばキスしてないな。」
「それも駄目なんちゃう?」
ポリアンナはまだ十三歳だった。俺たちは、ほぼ毎日、放課後に少しだけでも会うようにしていたが、セックスしない日はないのだった。
彼女は、おとなしくて優しいのに、セックスの時は豹変するようだった。いじめに虐げられてきた自分を爆発させて発散しているのだろうか。上になるのも四つ這いでされるのも好き。一度目は必ずフェラチオを要求される。口で俺をイカせ、精液を飲むと、その日の嫌なことが忘れられると言う。また、コンドームは絶対に着けさせてくれなかった。終わってからもシックスナインの体勢になり、マッサージだと言って俺の睾丸を弄ぶ。
過激さが段階的に度を上げていったお蔭で、少しずつ慣れた俺は、行為に我を忘れることがなくなった。変身もせずに済んでいる。ポリアンナと暮らすことになっても大丈夫かもしれない。俺は呟いた。
「結婚とか、親になるとかってどういう感じかな。」
「中学生相手にそんなこと考えるな、あほ。」
「だけど、こいつ女と付き合ったらすぐ子供できそうだぜ。」
その通りだった。前日の俺の精液が、次の日の昼ごろまでポリアンナのパンツに漏れてくるのだそうだ。今や、俺の精液の量は、自分よりポリアンナの体内にある方が多いくらいだろう。
「子宮が弘前さんの精子でいつも一杯なんだって思うと、すごく幸せ。」
この有り難い言葉に俺は合掌さえ一人でしたものだが、いつでも妊娠準備万端だということである。妊娠したらと考えると恐ろしい。ただ、ポリアンナは初潮もまだなのだそうだ。
「親って、普通に居るもので、言いたいことも勝手に言ったりしてきたけど、一人暮らしすると、ありがたく感じるな。」
「飯、作んのも、洗濯もしてくれるしな。」
「自分が親になってガキがいたら俺はウザいと思う。ずっとそいつの事、気にしなきゃならねえだろ。」
「男女が二人で楽しんだそのお代かね。」
「でも子ども生まれたら喜ぶわな、普通は。お前らは知らんけど。いくら頑張っても生まれん夫婦もあるし。人生は分からんわ。あ、ビール頼もか。面倒やからピッチャーにしよ。」
うまい具合にポリアンナから話題は逸れた。
俺たちの十年後はどんなだろう。そんな話に夜は盛り上がった。