グ-1
「どっから・・そんな話が出た?」
整った顔をゆがめて寂しそうな目で見つめる。
「聞いたのよ。ちゃんとこの耳で!」
「は?」
「結婚するつもりはない、って」
「だから、どっから!」
「給湯室で話していたでしょう!」
「あ・・ぁ。あれか」
ほんの少し思い出すように考えて、その後ホッと息を吐き出して、ゆっくりと顔を崩すように笑った。
「で?」
「で・・・って。それだけよ」
「だから、結婚したいヤツを集めて合コンするって?」
「悪い?私もう31なんですけど」
「悪いだろ?」
「・・・・」
「俺がいるだろ」
「だか、ら」
「俺がいるだろ?」
「・・・・」
「何度も何度も・・・
あんなに優しく抱いて、俺の気持ち伝わってなかった?」
優しく、抱かれてるとは思って、た。
「あんなに愛してるってささやいてたのに。
俺の気持ち伝わってなかった?」
「・・・」
「ほら。俺が贈った指輪もつけてるのに。
それでも結婚前提の合コンに行くなんて言うなよ」
テーブル越しに私の左手を優しく包んでピンキーリングを優しく触った。
「・・・・」
岡本主任の口調は穏やかに穏やかに。
年下のくせに私に言い聞かせるように穏やかだった。
「これは!」
「これは?」
「これはピンキーリングだもの!」
「うん」
「薬指には小さいのよ」
「うん」
「薬指にはめることはできないの」
「うん」
「だから、きっと、岡本くんの私への気持ちも
結婚するには足りない大きさ、なの、よ」
「言葉足らずだったな」