愛憎睾丸めぐり-16
冬休み明け、三学期の始めからヨハンナは登校してきた。まだ幾らか痩せてやつれが窺われたが、青い目は溌剌と輝いて見えていた。
「大丈夫なの?」
「大変だったね。」
声を掛けてきたのはクラスの女子だった。ヨハンナは驚いたけれども、クラスの女子も、ヨハンナの変わりように、同じく驚いていたのだった。
痩せていたためではなかった。何か穏やかな、優しい雰囲気がヨハンナからは漂っていたのである。
冬休みのあいだ、ほぼ毎日欠かさず清流はヨハンナのもとへ訪れた。親鳥が雛に、食べたものをそっくり与えてしまうように、清流は腹の精子を出し尽くした。そして、約束に違わず、口移しで少女に食べさせた。しっかりヨハンナが立ち上がれるようになるまで、少年は少女の恥部を口で綺麗にしてやった。
クリスマスの日、父から聖書をプレゼントされたヨハンナは、以前なら絶対読まなかったその類の本に、快復の喜びが手伝って、目を通す気になった。そして、自分の罪の先に、神のいる予感を得たのだった。
清流のいない時間、ヨハンナは、しばしば祈るようになった。精液を飲むことは、それでも淫らな行為と思えなかった。
ヨハンナにとって、清流の睾丸は、母親の乳房であった。また陰茎は乳首であった。自分の命はこの器官に支えられていると思い、清流には勿論、男の存在そのものに感謝の念を持つようになった。清流の指が下から入ってくると、足りないところを埋め合わせられた気持ちがした。
「ヨハンナ、ちょっとここ、教えてくれる?」
「どこ?」
学校での二人の関係は変わらなく見えた。
「あと、帰りに、あれ、また頼んでもいい?」
「いつでもいいよ。」
もはや普通に食事のできるヨハンナに、清流のものは必要なかったが、思春期の男子の体はやはり少女を求めてやまずにいる。それを少女は快く引き受けた。奉仕は喜びであった。
支え合う二人は、人の為に何かをしたいと思うようになっていた。
ヨハンナと良弥が再び出会い、互いに手を取り合う日が訪れるのも、そう遠くはないに違いない。