亜紀-24
管長補佐はびしょ濡れの服を脱ぐと健介に覆い被さってきた。かじかんだ健介の性器を口に含んで技巧の限りを尽くしている。厭でも体は反応して大きくなる。管長補佐は健介に跨って自分の性器に入れると健介を見ながら腰を動かした。健介は体の1点だけは興奮しているが、頭は醒めていた。
冷静に管長補佐を眺めていると、確かにこの女は素晴らしい体をしている。大勢の女性信者の中には若くて可愛い人が沢山いるし、管長がその気になれば意のままにすることなど容易い筈である。むしろ管長を神のように崇める信者は自ら進んで体を捧げようとさえするだろう。それなのに何故あんな狐のような女に執着するのだろうか、信者に時々手を付けることはあっても結局2人の関係を活性化するスパイスのように単なる遊びで終わってしまうのは何故なんだろう、あの女に何か弱みでも握られているのだろうかと健介は想像していた。
しかし今その裸を下から仰ぎ見ていると、まるで彫刻して作り上げたような完璧な体をしていることに気付いた。触れた時の柔らかさから整形では無いと感じたが、そうだとすればこの乳房の大きさと形は驚異的と言える。座っていても皺ひとつ出来ない引き締まった腹の滑らかなこと、臍の形までが美しく色気に満ちている。胸郭の理想的な大きさと形、適度な肉付き、これはもう素晴らしいの1語しか無い。大体女性の胸郭を見て美しいと思ったことなど初めてのような気がする。
煙るような恥毛は疎らで股間の肌の白さが透けて見え、更にその下に続く性器の端麗なことは健介の性器を呑み込んでいても容易に分かる。左右に拡がる太股の適度な肉付きはまろやかな女らしさと逞しさのたぐい希な調和である。管長が溺れるのは、この体の素晴らしさだったのだろう。
透けた服は管長の眼に焼き付いた体のあちこちを常に思い出させる効果があったに違いない。その内彼女は健介に倒れ込んできて抱きつき、顔と言わず首と言わずその口の届く所は何処でも舐め、吸い付き、噛んだ。健介は動かずに好きなようにさせていた。滝の中で射精しているし、頭は醒めていたから今度は何時間でも我慢できた。多分1時間くらいはそうしていたのでは無いだろうか。管長補佐はその間ずっと激しく体を動かしていた。大変な体力である。山歩きの時と言い、滝の中での動きと言い、この女は並の体力ではない。そして最後に獣のような咆吼を発して体を痙攣させ、果てた。取りあえず亜紀の件での頼み事はこういう形でお返しさせられた訳だ、と健介は思っていたが、管長補佐はそんな甘い女では無かった。
一息つくと体を繋げたまま彼女は話し始めた。甘ったるい口調は影を潜め、にやけた狐のように薄気味悪い顔も今は吊り目の厳しい顔に変わっている。
「小野田さん。私の頼みというのを聞いて頂戴」
「今のが先生の頼みではなかったのですか」
「今のはただのセックスでしょ。あれは頼みでは無いわ。付録みたいなものよ」
「では何でしょうか」
「私と小野田さんで教団を乗っ取りましょう」
「え?」
「管長を排除して私と組むのよ。貴方を管長にして上げる。この世が自分の物になったように好きなことが出来るわよ」
「管長を排除する?」
「ええそう。貴方が望むなら、私と貴方の関係はドライなビジネスにしてもいいのよ。婚約したばかりで私に乗り換えろとは言わないわ」
「いやしかし・・・、管長を排除するとはどういうことなんですか」
「それは慌てることは無いわ。ゆっくり考えればいいの。要は貴方がその気になるかどうかなのよ」
「これは僕がどれだけ管長に忠誠であるかを計るテストなんですか?」
「何言ってるの。あんたみたいな野心の無い男は忠誠もへったくれも無いのよ。忠誠というのは野心の裏返しだわ。野心を遂げる機会が来るまでそれを隠しておくという態度が忠誠ということなんだわ」
「なるほど、それは鋭い考えですね」
「私はただの色キチガイでは無いのよ。べたべた男に抱きつきながらこの男はどんなことを考えているんだろう、どんな性格なんだろうといつも冷静に観察しているのよ」
「今ですか?」
「馬鹿ね、服を着て抱きつく時の話よ」
「あの透けた服はその為だったんですか」
「そうよ。男は鼻の下伸ばしてる時が1番無防備に自分をさらけ出しているの。貴方は私のこと本当の色キチガイだと思っていたんでしょう。私を避けている態度で分かったわ」
「いや別に避けていたという訳では・・・」