暴虐-1
「脱げよ、千佳」
竜也が興奮に目をギラつかせながら言った。
悟が金切りバサミを舞依の鼻先に突き付けた。ブリキ板をも切断するその刃先が、不気味な光沢を放っていた。
「ああっ、待って・・・脱ぎますから・・・」
慌ててスカートスーツの上着に手をかけた。続いてブラウスのボタンを外しにかかった。羞恥と緊張のためか、指先が小刻みに震えている。
「オラオラッ!愚図愚図すんじゃねえッ!」
昂る興奮を抑えられず、苛立つ竜也が白いブラウスの襟に手を伸ばすと、力任せに左右に引き開いた。
プチッとボタンが弾け飛ぶ音と、いやっと言う千佳の悲鳴が同時に聞こえた。
「ったく手間取らせやがってッ!チンタラやってると容赦しねえぞッ!」
怒気を帯びたその目に、女たちは震え上がっていた。
「あ、はい・・・ごめんなさい。す、すぐ脱ぎますから・・・」
ブラウスを取り、スカートのフックを外した。
(もう後には引けねえぜ。突っ走るまでよ)
下半身をたぎらせ、男の目は血走っている。
(俺にこんな嗜虐趣味があったとはな)
ひとり悦に入っていた。何しろ普段相手にされないような美女を意のままに操れるのだ。抗う女には恫喝すればよい。それでも反抗すれば、ムチでも振り下ろせばいい。かつて経験したことのない支配欲に、男の興奮もピークに達していた。
「次はパンストだッ!」
一瞬躊躇した千佳だったが、ゴムに手を掛けると、一気に膝下まで引き下ろした。
艶やかな太腿に、男たちは思わず生唾を飲んだ。
人妻室長は、ベージュのパンティーとブラジャーの半裸姿を男たちに晒していた。レースを施した高級感溢れる下着が、人妻のなめらかな柔肌の美しさを際立たせていた。
「おっぱいを見せろよ」
竜也の命令に哀しげに顔を振ったが、男たちに背を向けると、両手を背中へ回した。
「おいッ!」
男の強い口調に、千佳の手が止まった。
「は、はい?・・・」
何か男の気に障ることでもしたのかと、怯える眼で振り返った。
「はいじゃねえよ。どういうことなんだッ!」
「な、何のことでしょうか・・・」
「俺様にケツを向けるとは失礼じゃねえのかッ!」
「・・・・・」
あまりの理不尽な言い掛かりに、千佳も言葉に詰まった。
「どういう教育を受けてきたんだよ。ええッ!」
そう言うなり、千佳の足元に大型レンチを投げつけた。
ガシッと金属とコンクリがぶつかり合う音に、裸足の人妻が思わず飛び退いた。
「申し訳ございません・・・」
男の無茶苦茶な言動にも、頭を下げる以外に方法がなかった。あまりの屈辱に涙が込み上げ、そして頬を濡らした。
一方の竜也はご満悦だ。高嶺の花の女室長を自由自在に操れる今の立場に、嗜虐心がたぎる。
「拾えよ。お前の教育は俺がしてやる」
投げたパイプレンチを顎でしゃくった。
千佳は生まれて此の方、お前呼ばわりされたことなどない。美貌と教養を兼ね備えた才女に誰もが敬意を払っていたし、年齢、性別に関係なく一目置かれた存在だった。
それが今では完全に地に落ちていた。部下を人質に取られ、暴力に怯える哀れな操り人形だ。