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人妻危機管理室長・危機
【鬼畜 官能小説】

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序章-1

 東京丸の内にある角紅物産株式会社。従業員五千人超、グループ会社を含めると四万人を越える総合商社だ。
 その自社ビル内にある研修センター。
『ハラスメントの防止に向けて・・・事例と対策』
ボードにはセミナーのテーマが大書きされていた。
「それでは実例を見ながらセクハラに当たるかどうか考えていきましょう」
 スクリーンには若い女性がプリンターの紙詰まりを直していた。膝をついた拍子にスカートが捲れ、太腿が露になった。それを上司らしい男性がじっと見つめていた。
「見るだけならセクハラにならんでしょう?」
中間管理職らしい年配の男が発言した
「そうでしょうか?ではこの女性が男の視線を感じ、それを不快に思ったら・・・?」
講師である女が、ホワイトボード前の椅子で脚を組みながら言った。ムッチリと肥えたパンスト越しの太腿が、窓から差し込む自然光にキラキラと輝き、艶めかしい色気を放っている。

 女講師の名は斉木千佳。リスク管理部に十数ある危機管理室の室長だ。専門はハラスメント。セクハラ、パワハラ等を正しく理解させ、それが起こらないよう啓発運動をするのが主な仕事だ。また不幸にもそれが発生した場合、被害者・加害者への聞き取り調査や、警察、マスコミへの対応等多岐にわたる。

 近年企業を取り巻くリスクは多様化している。コンプライアンスを無視する経営を行えばたちどころに非難され、それがバッシングに変わる。
 食品偽装やデータの改ざん、リコール隠しによって多くの企業が破綻した。そうならないまでも、企業ブランドの失墜は避けられない。
 不祥事はじめあらゆるリスクに対して十分な備えをしておくことは、今や組織にとって必須である。リスク管理部はそんな時流に乗って設立された、比較的新しい部署なのだ。

 千佳は今年32歳。3年前に結婚して今は人妻だ。斉木は旧姓だが、ビジネスではそれで通している。仕事が充実しているので、当分子供を作る気もない。
 この若さで危機管理室長とは異例の抜擢だが、それもそのはず大学で法律を専攻した豊富な知識、正義感、行動力、どれをとっても非の打ち所がない。
 おまけに抜きんでた美貌の持ち主だ。知的な目鼻立ち。セミロングのストレートヘアはポニーテール風に束ね、初々しいOLのようだ。それでいて上質なグレーのスカートスーツに身を包んだ肢体からは、ムンムンと大人の色気を発している。
 そしてこの部屋には女性がもうひとり。アシスタントの小野寺舞依だ。先ほどから資料を配布したり、プロジェクターの操作に余念がない。
 舞依は入社2年目で、千佳のような大人の色気はない。しかし小顔にショートヘア、ボーイッシュな顔立ちからは、若い女の弾けるような健康美が感じられた。どっちにしても千佳に負けず劣らずの美貌であることは間違いない。

 スクリーンではカラオケの場面に変わっていた。どうやら若い部下にデュエットを強要しているらしい。しかしそんなものに目を向ける男はいない。三十数名の男全員が女講師を、あるいは若い女アシスタントを、色欲的な目で見つめている。男たちの熱気に部屋の空調も用をなしていない。
 立ち上がった人妻は上着を脱いだ。白いブラウスからは豊満なバストが見てとれた。今にもボタンが弾け飛びそうだ。

「これを言ったらパワハラ、あれをやったらセクハラという明確な基準がないから厄介なんですよ。でも皆さんは伝統ある角紅の一員です。品位ある言動を心がけてください。今日は一日お疲れ様でした」
千佳が深々と頭を下げた。隣で舞依もそれに倣った。
 胸の谷間が見えるんじゃないか・・・。男たちも一斉に頭を下げた。が、目だけは前方の美女二人に注がれている。
 こうしてセクハラ防止どころか、セクハラを助長するセミナーは終わった。
 


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