アナスタシヤ-1
「森村、帰りにうちへ寄ってよ。」
アナスタシヤが声を掛けてきた。
「なんで。」
「うちは誰もいないし、いいじゃない。友達でしょ。」
トモダチという言葉の意味を森村は思い返そうとした。女と友達というのは、やはり言葉にそぐわない気がした。アナスタシヤも本当にそう思って言っているのだろうか。
「別にいいけど。」
断る理由は森村に別段なかった。
アナスタシヤのうちは、田舎じみた普通の民家だった。それも古い借家らしい。アナスタシヤの美しさが、どうしても不似合いだと森村に思われるほど、冴えない家の外観だった。
「上がって。」
見れば玄関には、大きな男の靴と、アナスタシヤの靴しか見当たらない。
「お父さんと二人暮らしなの。」
「ふうん。」
森村はそれしか言わなかった。アナスタシヤとはまだよく知らない仲でもあり、自分には両親が揃っている森村にとって、事情を聞くことは自然と憚られた。
暖房が点いていても、うすら寒いと感じさせたのは、恐らく壁の暗さだった。防寒着を脱いだ二人は、奥の四畳半へと入った。アナスタシヤの部屋だった。
女子の部屋に入ったのも森村には初めてだった。これも壁の色のせいなのか、イメージと違い地味な上に、物が少ないように感じられた。
呆然と立ち尽くす森村の前にやはり立っていたアナスタシヤは、部屋の真ん中でズボンまで脱ぎ始めた。
「あんたも脱いで。」
長く美しい脚の形と白い肌は日本人とは違うなと森村は思った。大人のように小さなパンティーが、尻を強調して見せていた。それも脱いでしまうと
「恥ずかしいの? じゃ、最初にあたしが見せてあげる。こないだみたいに寝て。」
アナスタシヤの声は上ずっていた。
「あたしはあの子みたいにばかじゃないから、ちゃんと見せるよ。」
そう言って、アナスタシヤは森村の顔を両腿で跨いだ。
これまで転校した先で虐められた経験と、これは少し違うと森村は感じていた。これは女子だ。しかも一人。恐れることはないような気が森村はしてきた。
「暗いな。」
「あ、そうか。きゃっ。」
森村は、アナスタシヤの両腿を腕に挟むと、腹筋の要領で起き直った。
両手を伸ばしたアナスタシヤは、転がって背中をつき、反対に身を起こして座った森村の胸に尻を開いた。アナスタシヤの脚は頭のほうへ下がっている。