油断-5
「そ、それでビッツコインについて捜査を進めるうちに、警察上部にある人物から圧力がかけられたんです。」
広徳の笑みがスッと消えた。
「それがオヤジって事ですか。」
「ハイ。今すぐ捜査を中止するように、と。」
「…オヤジのやりそうな事だ。」
「と言いますと?」
「昔ながらの古臭い人間だと言う事ですよ。金と権力大好き、それがあれば世の中何とでも出来ると思ってる。もうそんな時代じゃないんだ。古く悪しき人間はもう去るべきなんですよ。」
そう言って顔を背けた広徳だが、振り向いた時にはまた笑みを浮かべていた。
「確かにオヤジは早い段階でビッツコインに興味を持ち、いわゆる億り人と呼ばれる程ビッツコインで利益を生んでましたよ。相当な利益を生んでるはずです。それがある時大きな買い物をした直後にビッツコインの大暴落があり、下手したら負債を抱えてしまうのではないかと言う状態になったんです。その損失を取り返す為にオヤジは躍起になってビッツコインの普及に努め、何とか危機を回避したんです。その時に味を占めたんでしょう。ビッツコインの為替の上下を操れる事に自信を持ったオヤジは駆け引きで為替を上下させ売り、買いを繰り返し資産を増やして行きました。ビッツコイン保有者の中でオヤジはMR.ビッツコインと呼ばれてますよ。ビッツコインに関して日本ではオヤジの右に出るものはいない…。まぁ為替の上下とか下手したら犯罪かもしれませんが。そこらはまだまだビッツコインの法整備が整ってないんで株に比べればだいぶ法の抜け穴はありますから、オヤジぐらいのレベルだとそこをうまくすり抜けるでしょうがね。」
「そうなんですか。随分ビッツコインについて詳しいんですね。」
「まぁオヤジの見て色々学んだんで。」
そう言ってウィンクして見せた。いちいち女心を動かしてくる。かなりのプレイボーイであることも頷けた。
「あなたもビッツコインを??」
「やってますよ?ただし買い専門ですがね。未だかつて売って利益を得た事はないですが。まー昔からYour Tuberやってるんで、そっちで金稼ぎはしてますけどね。」
ビッツコインにYour Tube。いとも簡単にその事件に関するキーワードが広徳と繋がった。
「お父様もYour Tubeを?」
「いやー、そこまでは分かんないですよ。俺、大学に入ったと同時に自立したくて家を出たんで。それから全く家にも帰ってませんから。て事で毎日1人寂しく過ごしてるんで今夜遊びに来てくれますか?」
「…結構です。別に寂しいわけじゃなさそうですけどね。」
マギーは体育館の入り口からこちらを見ている女子達をチラッと見て言った。