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悠子
【その他 官能小説】

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悠子-21

 「マスター。私マスターのこと好きなんだけど知ってます?」
 「ああ、有り難う。僕も君のこと好きだよ」
 「有り難う。でも意味が違うんです、マスターの好きとは」
 「なんだよ、人が素直に言ってれば。で、どういう意味なんだ」
 「違います。私も素直な意味で好きだって言ったんです。でもマスターとは程度が違うんです」
 「はいはい。分かっています。若い女の子に好かれると思うほど買いかぶっておりません」
 「違います。全然その反対なんです」
 「反対とは?」
 「マスターが私のこと好きだっていうのは好意を持っているという程度のことでしょう?」
 「まあ、そうだけど好意を持たれたら迷惑か?」
 「いいえ。でも私がマスターのこと好きだって言うのはそんな程度のことじゃ無いんです」
 「どんな程度?」
 「こんな程度」
 「そんな手を広げたって分からないよ」
 「マスターと話してると私乗せられちゃうのね。自分に似合わない馬鹿なことやってる」
 「そんなこと無いよ。君に似合っているさ。そういう所が客受けするんだよ、君は」
 「そうですかぁ? 私ってそういう性格じゃ無いんですけど」
 「まあ、明るくて剽軽なのはいいことじゃないか」
 「ヒョーキン? 私って剽軽ですか?」
 「うん、そう思うよ」
 「本当ですかぁ」
 「ああ」
 「そうだとしたら此処で働くようになって私変わったんだわ」
 「そうか。以前はどうだったの?」
 「暗い女の子だった」
 「暗い?」
 「ええ」
 「そしたら、明るくなって良かったんじゃないの?」
 「ええ。ちっょと話がずれて来ちゃった。私がマスターのこと好きだって言うのはとっても好きだっていう意味なんです」
 「ほう。有り難う」
 「とっても好きだっていうのは死ぬほど好きだっていう意味なんです」
 「は? どうしたの? 給料の値上げ交渉でもしようっていうの?」
 「馬鹿。人が真面目に話してるのに」
 「いや、僕も真面目に聞いてるよ。だから言いたいことがあるなら別に遠回しに言うことは無いよ。何が言いたいんだ」
 「だから遠回しに言わないで死ぬほど好きだって言ってるじゃないですか」
 「はあ。で、どうしろって言うの?」
 「だから給料を上げてくれって・・・、馬鹿。そんなんじゃ無いって言ってるのに」
 「おいおい。独りで漫才なんかやるなよ」
 「厭だ、私。どうかしちゃってる」
 「何か熱でもあるんじゃ無いのか。それともさっきのお客さんの時飲み過ぎたとか」
 「それで又おしっこ洩らしたらどうしよう。マスターは又世話してくれるかしら」
 「そんなに酔ってるのか? 困ったな。今日は遅くなって来てくれる予定のお客さんがいるんだよなあ。君を目当てに来るんだから今日はもう帰っていいよっていう訳にいかないんだ。それまで其処で横になって寝てたらどうだろう」
 「大丈夫です。そんなに酔ってません」
 「でもおしっこ洩らしたら大変だからな」
 「おしっこなんか洩らしません」
 「今自分で言ったじゃないか」
 「だから私どうかしてるんです」
 「うん。まあとにかく横になってるといい。目を瞑ってじっとしてるだけで大分違うよ」
 「アップル・ジュースを飲まなくていいんですか?」
 「あ、そうだな。それじゃ今コンビニで買って来てやるからそれまで休んでればいい」
 「あ、いいんです。アップル・ジュース飲むほど酔ってませんから」
 「まあいい。予防は最良の治療だから」
 「ヨボーワサイリョーノチリョー? 何ですかそれは」
 「やっぱり酔ってるんだな。まあいい。横になってなさい」


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