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渡れない岸辺
【兄妹相姦 官能小説】

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6-1

 三年後……。
 麻衣は東京の大学に合格し、上京して来た。
 雄介の大学には及ばないまでも名の通った大学だ。
 共に教師で教育には熱心な両親だが、女の子が上京して一人暮らしをするという事に関しては、父が簡単には首を縦に振ってはくれない、上京を両親に認めさせるには一定レベル以上の大学でなくてはと頑張ったのだ。
 
 雄介は就職して二年目、もちろん東京に住んでいる。
 大学時代は港北のアパートに住み続けたが、今は都内のワンルームマンション住まい、麻衣は心配性の父の希望を汲んで女子学生寮住まいだが、ちょくちょく雄介のマンションに入り浸っている。

 麻衣は三年前より女らしく、奇麗になった。
 特に東京に出てきてからは洗練されても来ている。
 今でも雄介は麻衣を女として愛しているし、麻衣もそれは同じ。
 頻繁に会えるようになり、会えばやはり体を重ねてしまう。
 しかし……。

 雄介にはそれが気にかかっている。
 もう引き返せなくなる一歩手前まで来ているような気がするのだ。

 兄妹と言う現実をこちらの岸、結婚と言う夢を向こう岸としよう。
 ごく稀にしか会えなかった頃は向こう岸に向って全力で漕いでも川を渡り切ってしまう気遣いはなかった、だから盲目的に、情熱的に愛し合うことが出来た、どんなに懸命に漕いでも引き戻されることはわかっていた、だからこそ少しでも岸を離れようとしていたのかもしれない。
 しかし、麻衣が上京したことでこちらの岸からは確実に離れてしまった、川幅の半ばを越えてしまって、もう漕がなくても知らず知らずのうちに向こう岸に引き寄せられてしまいそうな気がするのだ。
 しかし向こう岸にはいくら近寄っても岸に船を着ける事は出来ないのもまた事実……その事は二人ともわかっているはず、近づけば近づくほど引き返すことも難しくなることも……。


▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽

「タイに転勤することになった」
 麻衣を呼び出したレストランで雄介はそう切り出した。
 麻衣が上京してもうすぐ一年になる、正月に揃って里帰りした時、両親と共に実家で数日を過すと、やはり自分たちは兄妹なのだと実感せざるを得なかった、引き返せなくなる前に何とかしなければ……。
 雄介は新しく設立されたタイ支社への転属希望を出し、昨日それが認められたのだ。

「えっ……………………………………」
 麻衣は絶句した……。
「来月出発するよ」
「……もう会えなくなるの?……」
「そんなに遠い国じゃない、ちょくちょく帰っては来るだろうね、でも今のように頻繁には会えなくなるな」
「そんなのって……」
「嫌か?……本当は俺も日本を、麻衣の側を離れたくはないんだよ……」

 その一言で麻衣は悟ってくれたようだ。
「……お兄ちゃんの考えてること……わかるわ……本当はあたしもわかってるの……でも……」
「気持ちが離れられないなら……」
「物理的に距離を置くしかない……そういう事なのね?」
「ああ……」
「わかるの、頭では理解できるの……でも……」
「俺もわかっているつもりなのに踏ん切りがつかないんだ……だから……」
「お兄ちゃんの言う事……正しいわ……口惜しいけど……寂しいけど……哀しいけど……」
「わかってくれるね?」
「……うん……納得できるまで時間がかかるかもしれないけど……」
 
 その夜、二人はレストランの前で別れた。
 会っていながら愛し合わずに別れるのは、麻衣が初めて上京して来た時に、新宿のホテルで過ごした夜以来初めてのことだった。



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