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渡れない岸辺
【兄妹相姦 官能小説】

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6-2

 雄介が旅立つ前日、二人はディズニーランドにいた。
 横浜の夜に、いつか連れて行くと約束したが、まだ果たしていなかったのだ。
 実は二人にとってディズニーランドは初めてではない、子供の頃に両親に連れられて一泊で来たことがある、二人の子供の頃の大事な思い出の場所でもあるのだ……。
 その日、麻衣はミニーの耳をつけてはしゃいだ、子供の頃のように……。
 
 浦安の駅前で……。
「じゃ……お兄ちゃん、体に気をつけてね」
「麻衣もな」
「あたしは日本にいるんだもん、大丈夫よ、でも向うはやっぱり伝染病とかあるんでしょう?」
「予防接種はばっちりさ」
「でも気をつけて……あたしの大事なお兄ちゃんなんだから……それはずっと変わらないんだから……」
「わかった……麻衣」
「何?」
「プレゼントがあるんだ」
「何かしら?」
「開けてみて」
「……シンデレラ城のスノーボウル……似たものを持ってるわ」
「ああ……みなとみらいのな……」
「あれ貰った時、あたし泣いたんだったよね、お兄ちゃんから貰うものなら何でも嬉しかったのに、お兄ちゃんがあれを選んだ理由を聞いて……でも今日は泣かないよ」
「だと思った」
「どっちも大事にする……お兄ちゃんのプレゼントだもんね……どっちもとても良い思い出だから……辛い思い出でもあるけど……」
麻衣はちょっとの間下を向いてしまったが、顔を上げた時は笑顔になっていた。
「お兄ちゃん……握手して」
「ああ……」
「じゃ、あたしは東京に帰るね……明日は見送りには行かない……」
「その方が良いね」
「じゃあね、元気でね」

三年半前、新宿のホームで駆け寄ってきたのと反対に走り去って行く。
雄介はその後をゆっくり歩き出し、同じ改札を通って逆向きのホームの階段を上がる。
このまま成田に向うのだ。
ホームに立って反対側のホームを見るが、麻衣の姿はなかった。

成田方面行きの電車の音が聞こえなくなってから麻衣は立ち上がった。
階段の踊り場にうずくまっていたのだ。
雄介を乗せた電車が走り去るのを見たら泣いてしまう……もう幾晩も泣き明かしたと言うのに……でも雄介がまだホームにいる間はそこを離れたくなかった……だが、そんな姿を雄介に見られてはいけないと思った、海外転勤を申し出てまでけじめをつけようとしている兄の心を惑わすことになるかもしれないから……。


▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽    ▽

それから七年……。
雄介は日本に、松本のホテルにいた。
麻衣の結婚式に参列するために。

大学を卒業した麻衣は長野に戻った。
白馬ではなく松本、電車とバスを乗り継いで2時間弱かかるし、どちらも本数が少ないので麻衣は松本住まい、だが週末には楽々帰れる距離だ。
正直、大学の残り三年間では雄介を思い切る事はできなかった、このまま東京で暮らすより故郷で……そう思ったのだが、さすがに白馬では就職先が限られる、その妥協点が松本だったのだが、そこで麻衣は二人目の運命の男と出会うことになる。
同じ会社の先輩、高校時代は甲子園まであと一歩だったというチームの四番打者、大柄で豪快、朴訥な人柄の男、歳は雄介より二つ下。
彼は麻衣を見初めてアタックをかけてきたという、最初のうちは雄介を思い切れずにいた麻衣だったが、猛烈でしかも粘り強いアタックに折れる格好でデートを重ね、一枚一枚、薄皮を剥く様に実の兄への許されない想いを取り除いてくれたのだそうだ。
彼と初めて結ばれる、と言う夜、麻衣は全てを告白したのだという。
しかし、彼は何も言わずに麻衣を抱き、その後でプロポーズしてくれたのだそうだ。
その場では返事が出来なかった麻衣だが、実家に戻って二つのスノーボールを一晩見つめ、イエスの返事をした。

雄介は三十歳になるが、まだ結婚はしていないし、決まった相手もいないが、それは麻衣のせいではない。
七年の月日は決して短くはない、そして毎年正月には実家で麻衣とも顔を合わせている、ずっと会っていなければ逆に思い出は輝きを増すばかりかも知れないが、妹としての麻衣の成長を、変貌を目の当たりにして、年々女としての麻衣への想いを打ち消してきたのだ。

そして、今日。
純白のドレスに身を包んで微笑む麻衣は美しいと思った。
華やかに咲き誇る大輪の花、雄介はその開花を手助けし、見守って来た。
だが、だからと言って麻衣は自分のものだと主張するつもりはない、雄介にとって麻衣は恋人であったと同時に、常に妹でもあった、自分たちにはゴールは存在しないことは常に自分に言い聞かせて来たし、麻衣にも言い聞かせて来た。
(これでいい……)
 雄介は、新しいパートナーと手に手を取ってキャンドルサービスに廻る麻衣を見つめていた。
 明日、再びタイへ戻る。
 日本に戻るのはいつになるか……当分の間国内勤務の希望を出すつもりはない、麻衣の幸せを願うのならそうすべきだと思う、そして自分自身の幸せを探したい気持ちが沸き起こって来る日まで……。

 新郎新婦がテーブルに廻って来た。
 父が、母が、「麻衣をよろしくね」と彼に言う。
「麻衣を……頼んだよ……」
 雄介もそう口にした。
「はい、命にかけて」
 彼は全てを知っている、知っていてそう言ってくれているのだ。
 雄介が差し出した手を、彼は力強く握り返して来た……。


(終)


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