『第2章 その秘密の出来事は』-4
「鼻血が出そうです、先生」
利恵は吹き出した。
「あはは、すごい、秋月くん。そういうジョークが言える余裕があるんだね」
「いや、ほ、ほんとに……」
遼は自分の口と鼻を右手のひらで覆った。左手はずっと自分の秘部にあてがわれていたが、大きく硬くなり始めたペニスを隠すことなどとっくにできなくなっていた。
「最初はキスから。ほら、手をどけて」
利恵は遼の右手をそっとどかすと、その固く結ばれた唇に、自らの柔らかな唇を押し当てた。
んっ、と呻いて遼は反射的に目を閉じた。
利恵は遼の上で四つん這いになり、ゆっくりと時間を掛けてその行為を続けた。そして次第に震えていた遼の唇の力が抜けてほんの少し口が開いたのを確かめた利恵は、体重をかけて遼の身体に覆い被さり、両手を彼の背中に回しゆっくりと撫でながら舌をその口に差し込んだ。
いつしか二人の唾液が混じり合って遼の頬を伝った。
遼の身体を流れる血は沸騰寸前だった。腰の辺りがじんじんと痺れ、鼓動も激しく、速くなっていた。利恵が口を離した時、遼は呼吸過多のようにはあはあ、と荒い息を繰り返した。
利恵は遼から身体を離し、仰向けになった。
「秋月くん、きて……」
遼は焦ったように身体を起こし、広げられた利恵の両脚に手を掛けた。
「場所、わかる?」
利恵の問いかけに答えることなどできない程に、遼は昂奮していた。
覆い被さってきた遼のペニスを右手で握った利恵は、そのまま自分の潤った谷間に導いた。
「ここ……」
遼は両手を利恵の両脇に突っ張り、焦ったように腰を突き出した。
ああん! と大きな喘ぎ声を上げて、利恵は身体を仰け反らせた。
遼の武器は、ぬるりと一気に利恵の身体の奥深くまで到達した。
「いいよ、秋月くん、そのまま動いて、思い切り」
利恵がそう言い終わるのを待たずに、遼は腰を乱暴に上下させた。
「ああ、すごい! 秋月くん、感じる! 奥の方が、ああ!」
利恵は目を閉じてはあはあと喘ぐ。
――そして間もなく。
「先生っ!」
ずっと無言だった遼が叫んだ。
「イって! 遠慮しないで!」
遼の腰の動きが止まり、利恵の中に深く入り込んだ彼の武器の先端から激しく熱い液が放出され始めた。
うぐううっ!
遼は全身をびくんびくんと大きく脈動させながら歯を食いしばっていた。
利恵の身体の奥深くに、強烈な勢いで若く熱い精液が満たされていく。
はあはあと肩で息をしながら遼は利恵と繋がり合っていた。身体を離そうとした遼の背中を反射的にぎゅっと抱きしめた利恵は耳元が言った。
「まだ、そのままでいて」
遼は利恵の首筋に鼻を擦りつけた。
「いい匂い……先生の匂い」
「どんな?」
「なんかハーブ系の、爽やかなすっとした……」
「ローズマリー。若返りのハーブ」
「ローズマリー?」
「そう。さっき食べたパスタもこの香りがしてたでしょ?」
「ローズマリー……」
遼はもう一度鼻を鳴らしてその香りを吸い込み、目を閉じて安心したようにため息をついた。
その日から遼は堰を切ったように利恵のアパートを訪ね、二人は熱く火照った身体を重ね合わせた。遼は平日、部活が終わると友だちの家で勉強して帰る、と自宅に電話をし、利恵を抱き、抱かれた。