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「高いお金を出して買った甲斐があったわ」
缶ビール片手に、シンに近づく麗子。
ブラジャーとショーツだけのあられもない姿は、モデルさながらである。
ほっそりしつつも筋肉もちょうどよくついた引き締まった長い脚。
小ぶりでツンと上がった丸いヒップ。
くびれたウエストに縦長のヘソ。
そして普通よりやや大きめの白い乳房。
麗子は、間違いなく美人に分類される側の人間だ。
どう見ても男に不自由しなさそうな麗子は、恋人も作らずシンとのセックスで欲望を満たしている。
セックスロボット・シンが発売されるや否や、すぐに購入したのは、それなりの理由があった。
高嶺の花と謳われる麗子は、食品会社の品質開発部に所属する、才女である。
花形の部門で活躍するだけあって、仕事は不規則でめまぐるしい忙しさ。
大学時代から付き合ってきた恋人と別れてしまったのは、麗子の多忙さによるすれ違いからであった。
そこで華やかだった麗子の男性遍歴がプツリと途絶えることとなる。
だが、麗子は恋人がいないことを嘆く必要はなかった。
仕事は楽しく、職場の仲間もいい人ばかりで、精神面ではむしろ今までより満たされていたほどである。
精神面で満たされているから、あとは身体面を満たしてやればいい。
そう考えていた彼女にとって、恋愛感情抜きでセックスができるシンは、まさにうってつけの存在だった。
AIなだけあって、セックスを繰り返すたびにシンは麗子がどうすれば悦ぶのか、どんどん学習していった。
好きな体位。性器以外の感じる場所。どんな言葉をかければ喜ぶか。
シンと麗子は身体の相性が良くなっていき、今ではすっかり毎日シンとセックスをするのが日課になっていた。
「男の人がセックスロボットにハマっていくのがわかるわ」
いつの間にか空になっていた缶ビールをコト、とダイニングテーブルに置いた麗子は、シンの胸板を指でなぞる。
スリープモードのシンは、仁王立ちの状態で固まっており、起動させるには持ち主からのキスが必要になる。
酔ったせいもあってか、先程セックスしたばかりの麗子は、間近でシンの端正な顔を見てる内に、また脚の間が熱く潤むのを感じていた。
シンと恋人のような甘いセックスを繰り返してきた麗子。
彼女が恋人を作らず、シンに傾倒していくのには他にも理由があった。
シンを見つめてはいるものの、麗子の頭の中に浮かぶ男の存在。
それはAIなどではなく生身の人間だった。
ジッとシンの横顔を見ていた麗子は、込み上げてくる劣情に自分の理性がどこかへ押しやられていくのを感じていた。
どうせ相手はロボットで何の感情も持たない。
ならば。
少し躊躇っていた彼女は、やがて何かを決意したかのように、シンにキスをした。