伝説君臨-6
時間になり会議が始まった。若菜と石山は並んで上座席に座り、捜査本部長であるマギーが説明するこれまでの事件のまとめを聞いていた。マギーの説明中、補足がある場合、それぞれの刑事が補足を述べ捜査結果を固めて行く。それを議事録として華英がパソコンに打ち込んでいた。
「…、と、ここまでが今、捜査で明らかになった事です。そして県知事から捜査を打ち切るよう、圧力がかかりました。彼にはこの事件の犯人に目星がついているのでしょう。恐らくは彼の関係者、身内…。そこを徹底的に洗って行きます。と同時に今回の容疑者が残して行った足跡を再度洗い直して行きます。高島謙也がらみでもう一度見直せば見えてくる事もあるかも知れません。どちらにせよ捜査範囲が狭まったのはラッキーでした。これ以上被害を出さない為にも迅速に解決に導きたいと思います。」
分かりやすくて良い報告だったと若菜は思った。マギーの報告が終わった後、若菜が代わって壇上に立った。
「我々は高島謙也のかけてきた圧力を無視して捜査する事になります。圧力に屈した振りをしてコソコソと捜査をする訳ではありません。真っ向から刃向かう事になります。となると高島謙也はきっとさぞかしご立腹する事でしょう。更なる権力を行使して我々を抑えつけようとする筈です。汚いやり方で。弱みにつけこんで。例えば人質を取る事も。ですから皆さんは自らの身は勿論、ご家族、恋人なども含めて十分に注意を払うよう心掛けて下さい。そして今回の事件の発端は女性市長の全裸貼り付けと言う女性を狙った犯行だった事を忘れないように。私は今まで散々犯罪に巻き込まれた女性警察官を見てきました。女性は狙われ易いんです、悲しい事に。ですから男性の皆様はくれぐれも女性の力になってあげて下さい。どんなに優秀な女性でも、力ではやはり男性には勝てないですから。まぁ私は別ですが!汚い奴らは必ず女性を狙って来ます。今回、全員にGPS発信機の装着を義務づけします。体、車の両方に必ずつけるように。」
そう言うと、マギーが全員にGPS発信機を手渡した。そして若菜は最後にこう付け加えた。
「あとこのような事件の時、必ず存在するのが内通者…、つまりスパイです。いいですか?初めに言っておきます。私は警察内にスパイを見つけたら迷わず撃ちます。そのつもりで。」
一同に緊迫した空気が流れた。これまでに起きた事件の中、いかに若菜がこの内通者を憎んでいるかは知っている刑事達は、決して脅しではない事を知っていた。
「ではマギーから本日の捜査内容を指示してもらいます。終わったら早速捜査に向かいます。」
「御意!!」
すっかり御意が慣例化してしまったようだ。マギーは捜査内容と振り分けを伝え、捜査会議を終えたのであった。